『1789』感想・9
ちゃぴのマリー・アントワネットは、彼女の集大成とも代表作とも言えるような、素晴らしい造形でした。
宝塚のトップ男役の相手役をヒロインと呼ぶのであればアントワネットはヒロインではないのだけれど、そんな定義などどうでもよいと思わされました。
ちゃぴはオランプを演じても素晴らしいものを作ってきたに違いないけれど、今回はアントワネットでよかったと思います。
消極的な意味においては、ちゃぴは決して宝塚的ヒロイン系の娘役ではないから。
仔犬系の可愛さ、いじらしさ、けなげさはあるけれど、一目見て「ああこの子がヒロインね」「主人公が一目ぼれする相手ね」と納得させられるタイプではないから。
もちろん、最終的にはそれを演技である程度埋めてはいるけれど。
ちゃぴがアントワネットでよかったと思う積極的な理由は、ちゃぴは人間的な大きさを出せる役者だから。
アントワネットの王妃としての大きさを出せる。
もう一方の主人公として舞台を統べることができる。
舞台上で演技の相手を包み込むことができる。
元男役という特殊性によるものか娘役トップ就任数年のキャリアによるものか、舞台上で人を率いることができる。
ただの娘役でも、(狭義で)トップ娘役という地位相応ななにかでもなく、そういうものを超えて役者として存在できる。
そして出てきたものに観客である私は揺さぶられる。
これは技量抜きにはできないけれど、それだけではどうこうできるものではないと思う。
学年を考えれば彼女はまだ新公学年なわけで(しかも中卒)、そういう意味ではオランプでも相応だと思うけれど、キャリアと持ち味的に今回のアントワネットはドはまりだったと思います。
今作のアントワネットとベルばらのそれとは別物だし。
トップ男役の恋愛面での相手役ではないという意味で大胆な配役だったとは思いますが、そんなことはどうでもいいと思うほどの出来でした。
思い切った配役をした小池センセイに感謝し、挑戦的な配役に応えたちゃぴに大きな拍手を送りたいと思います。
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