『夢千鳥』を見たんだ・2

宙組公演感想,宙組

5月8日19:00~にディレイ配信された宙組バウホール公演『夢千鳥』について。

脚本・演出もたいへん素晴らしかったんですが、もちろんそれを板の上で再現する役者あってこそでもありました。

白澤優二郎/竹久夢二の2役を演じたそらちゃん。
そらも役の幅の広いお人である。
最近ではわりと女役も多めだったんですが、このたびは大人の男役。それもド屑。

ド屑な男(の役)って、宝塚でも一定の人気ある役柄ではあるんですが。
そらちゃんもそりゃもーーーーーーーーいい感じにクズで、めっっっっちゃ良かった!!!

身近にいたらとんでもなくヤバイですが、舞台で見る分にはけっこう楽しい。
「こいつ、やべぇ」「ちょっと待てや」とかつっこみながら、高みの見物できるもんね。
いや、高みの見物というには見るがわの過去に、内面に迫ってくるものもあるんですが。
DV経験者(被害者)とか、家庭内暴力がすごかった家に育ってた人とかだと、見るのキッツかったりしそうではある。

クズなそら夢二になんで女が群がるかって、そりゃあの「竹久夢二」だからだし、顔もいいし、色気出まくりだし、あと、なんか女の扱いがめっちゃずるい。
夢二、めちゃくちゃずるい。
「私が選んだんだから」と彦乃に思わせる流れとか、「あの人ああ見えて本当は……」と感じさせるところとか、とにかく彦乃逃げてーーーーーーー!!!と言わずにいられん。

いや、でもこういうのに引っかかる気持ちはわかる。
保護欲とかそそりまくってくるんだもん。
夢二も、そらちゃんも。

夢二が着物をゆるめに着て、しどけなく座ってる姿の色気すごかったですねぇ。

最初の相手役・芸者の菊子(沙羅ちゃん)に「この小鳥はきっときれいな音色でさえずるだろう」と言ってキスするところもひいいいいいいとなりましたわ。

峰里ちゃん演じる他万喜とのやり取りもまた、2人とも芸達者だから迫力あってすごかった。
ほんと怖い怖い怖い、ぞくぞくする。
並みの舞台人じゃこうはいかんなぁ。

夢二と他万喜がケンカするシーンもだし、刺した他万喜の血に興奮して絵筆を走らせる狂気も。
夢二の性格のヤバさもだけど、芸術家としての業や性を強く感じさせる場面。
ああ、これがあってこその「竹久夢二」なんだなと。

『夢千鳥』にはフィナーレもあり、それもまた素晴らしいものでした。

デュエットダンスもロケットも男役黒燕尾もある。
これでもかってくらいフルにある。

2020年のコロナウイルス禍から、ずっと大劇場公演は出演者制限がされて下級生の公演数は約半分に、そして大小多くの公演が中止・延期になったり日程が縮小されたり……。新人公演も行われませんでした。
とにかく下級生が舞台経験を積む機会が少なくて、それを補おうという目的だったのかもしれません。

男役黒燕尾では、そらの黒燕尾のソロダンスがまた異次元でした。
今の宙組、男役トップ3がダンサーじゃないためかどうしてもフィナーレの振付とかが緩めになってるとおもうんですよね。
でもそらちゃんなら遠慮なしに振りをつけられる。

そらの身体能力をこれでもかと生かせる振付。
正直さほど期待してはいないけれど、「そらちゃんがトップだったら大劇場でこの黒燕尾を見られるのか」と思わずにいられませんでした。

そして、そらみねりがあおいさんの歌でデュエットダンス。
花組に組替えするあおいさんを惜別の目で送るような視線にぐっときました。

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