『星逢一夜』感想・2

雪組

雪組大劇場公演『星逢一夜』初日の感想の続き。

image

image

ちぎみゆだいもんの芝居がすごい舞台でした。

※ネタバレ的な部分は避けられないので、読みたくない方は注意※

子役時代は可愛い。
可愛いけれども繊細。

ちぎ演じる紀之介(晴興)が自分らの親を死なせた藩主の息子だと知りばーっと駆けていく泉。
そのあと、星見の櫓の上での紀之介と源太の芝居はしみじみします。

ここでいい芝居をしているだけに、大人になってからのやるせなさが生きてくるんだ。

・みゆ演じる泉は猪のような娘。
しとやかじゃないし、「ばーっと駆けていって喧嘩もするし。

それなのに、ほんっと、ヒロイン度高いなー!!

芝居がうまくて、声がよくて、なんというかちゃんと「娘役」だ。

観ている側が、ついみゆに引っ張られる。

どうやら私の観劇欲は、主演の男役が誰かよりもヒロインの娘役に左右されるようなのだが、みゆはかなり観劇欲を刺激される娘役だ。
少なくとも「ヒロインがみゆかぁ……見る気おきねぇ」ということにはならない。

(もっとも「見る気おきねぇ」となってもたいてい観るんだが。
でも「これ以上チケットを増やさない」という選択になったことはある。困ったことに、大好きな男役さんが主演であってもだ)

みゆの恋愛物はすごいな。
特別な美少女ではないのに、互いが惹かれあっていくのに説得力がある。

結婚して、子供も3人いて、夫は晴興に殺され、「それなのに、なんであなたを好きなんだろう」(言い回しは正確じゃありませんが。実際には方言だし)と語る言葉のすごさよ。
みゆが言えば、そんなこともあるだろうと思う。
すとんと、こちらの腑に落ちる。

・だいもん演じる源太は優しい男。

優しすぎて、自分は一揆の首領になりたいわけではないのに、他の人たちの気持ちを思うばかりに周りを止めることもできなくて、かつて親友だった晴興と対峙してしまう。

婚約した愛する女・泉が晴興を愛していることも知っていて、だから晴興に「貰ってくれ」と言う。
泉のために土下座もする。
だからといって晴興が泉と結婚することもできない。

彼の優しさが、自分を幸せにするわけでも他の人を幸せにするわけでもないのが辛いところですが。
これは源太が悪いのではなく、そういう時代でそういう環境だったということ。
「泉はもう俺のものだから手を出すな」と言ったほうが晴興も泉も楽だったかもしれないけれど、源太はそう言えないんだよね。

子供時代、晴興とはじめて出会って、泉がなぜ晴興に辛い態度をとったのかの説明をするところから彼は優しい。
その優しさ、温かさは大人になっても変わらない。

足を洗ってもらうところ、一揆の相談中に泉が晴興と再会していたところを見ての言葉のかけ方などは心に沁みた。

・ちぎが演じる晴興はものすごく辛い役回り。

藩のために、国のために、心を殺して生きる。
今の農民を死なせても将来の国のために改革を推し進めていく姿はたしかに受け入れがたいものですが、晴興の引き裂かれた心の痛みはこちらに迫るし、吉宗に恩義を感じているのもわかるから、なんかもうほんと辛いなぁ……!!

親友を斬らねばならない運命も辛いし、一揆を起こした農民を助けるのと引き換えに遠く陸奥への永蟄居となるとか、ほんと切なすぎる。

彼はいったい何のために生き、何を得られたというのか。
出世したのも私利私欲のためじゃない。
私心なく誠実に生きてこういう宿命に遭う晴興は哀しすぎます。

3人3様に心を揺さぶり、涙をこらえきれぬ舞台でした。

1

雪組

Posted by hanazononiyukigamau