『星逢一夜』新公を見たんだ・1

配信で『星逢一夜』の新人公演を見ました。
新公の演出は本公演と同様、上田久美子先生。
2015年の作品だから、9年ほど前になるんですね。

新公主演はれいこちゃん、新公ヒロインはみちる、新公2番手はひとこ。
皆、今は雪組にはいない。

このときれいこちゃんは3度目の新人公演主演。
さすがに劇団からの扱いにも慣れて、堂々たる主演ぶりを見せてくれていました。

芝居が上手いんですよ。
れいこちゃんの晴興に泣かされる。静かに心を殺した芝居が上手い。そして美しい。
天野晴興は農民や町人たちからは鬼のような男と罵られながらも、幕政のために尽くす。
耐え忍ぶ役で、表情を殺した中に悲哀や心の揺れを見せなければいけない。でも見せすぎてもいけない。

みそっかすの次男坊扱いで星を見上げていた少年・紀之介のときを経て、将軍吉宗に取り立てられて享保の改革に突き進む。
年貢の取り立て方法が変わって食い詰めた民が増え、出身地の三日月藩で一揆がおきる。
一揆の首謀者・源太に「一揆はやめろ」と諭すも決裂し、一揆がはじまり幼馴染たちが命を落としていくところで自ら源太との一騎打ちで決着をつけようとする。
この感情の昂ぶりと、源太を討ち取ったのちは放心のなか、将軍に自らの身命を賭して農民たちの助命を願い出る。源太を失ったことが、晴興にとってどれほどのことだったかとわかる。

役柄上、派手な感情の移り変わりを見せることはできないけれど、抑えた表現にじゅうぶんに気持ちを見せる。

運命=星に翻弄され、ままならない中にも自分の正義と宿命を生きた晴興に心が痛む。

幼馴染の農民の娘・泉への慕情も美しく、辛い。
形見に刀をやって別れた少年時代から、藩主になっての再会(泉は源太と婚約中)、そして永蟄居前の敵討ちから逃亡の話。
救いがない。救いがないけれども、これが当時の社会だよなぁという気もする。

新人公演ながら、とても見ごたえのある芝居でした。
作・演出のウエクミってやっぱすごいよなと思いますよ。


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