『わが歌人生』

雑誌・書籍

葦原邦子さんの『わが歌人生』を読みましたよ。

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「歌人生」であるからして、現役時代の話のみならず、退団後女優になられてからの話も豊富。
すべてが歌・音楽への愛に満ち、恩師・白井鐵造氏への感謝にあふれています。

といっても、葦原さんの現役時代も白井先生の宝塚時代も生半可な知識以上には知らないので、往年の宝塚通の方ほどには感銘を受けられないのですが、それでも子弟愛や芸術への思いには心をうたれます。

この本で初めて知ったのですが、「すみれの花咲く頃」はもともとはドイツの歌なんですね。
「白いにわとこの花」が原曲で、それがフランスでシャンソンの「レ・リラ」になり、日本では「すみれ――」に。
国が変われば花も変わるのが不思議で面白い。

昔の公演主題歌レコード吹き込みの話も面白かった。
昭和8年1月の『巴里・ニューヨーク』という作品でどうやら初めて著作権問題に引っかかったらしい。
そのために取り直しをした、と。(大らかな時代だったもので、それまではどこからもイチャモンがつかなかった)


著作権のクレームはメロディなので、作曲のやり直しは時間的にも不可能ということで、仕方がないから、はっきりと「同じではありません」と強調できそうな音符をチョイと高くしたり低くしたり、その代り歌詞がどうなろうとそこは歌う方にまかせる、というわけ。

100周年大運動会の花組入場行進を思い出したわ。


なにしろちゃんとした録音スタジオがないので、その時は宝塚ホテルの奥まった一部屋を借りて、屏風をめぐらした中に、録音技師一人とオーケストラも歌い手も、全員がこもってのレコード吹き込みという、今では話を聞いても想像もつかないような情景だった。

こういう裏話も楽しい。

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