『近松・恋の道行』感想・4

花組

●大真面目なのにウケてしまうところ。

2幕で自らの愛の証としてみりおん演じるさががかっぱ(むしろにしか見えんが、駕籠の被い)を投げてよこす。
それをしかと受け取りぐっと引きつけるみわっちの手の震えがおかしくてたまらんのだ。笑う場面じゃないのに。

未見の方には「携帯のマナーモード」と呼ばれた蘭寿さんエリックのガクガクした動きを思い出していただければ……。
あんな感じで盛大にぶるぶるしてました。

動きが熱かったです。さすがみわっち。

●みわっちでもう一箇所。
嘉平次のソロは何箇所かあるんだけど、心中を決意したときのソロはすごかったです。
みわさんオンステージ! 入り込みまくり!

熱量がハンパじゃないんだよね。

●みつる演じる清吉(忠清)は元は足軽の息子だが現在は小間物商をしている。
上手通路から登場し、6列あたりで立ち止まり、センター側のお客さんに絡む。かんざしをいかがですか? って。
ううう、その席の人が羨ましい。

流れ上はお客さんに断られて「そうですかー残念」みたいなことを言って舞台に上がるんだが、初日のお客さんは両手を出して頂戴ポーズをしていた。
笑顔で流れどおり残念がってるみつるはさすがだった。

●タソは今日も八面六臂の大活躍でした。
女形の芳沢あやめのみならず、さまざまなところでいろんな役をしている。
バイトだらけというより通し役がもらえてないだけなんだけど、それを残念だと思わせないほどにどれもよい芝居をしている。

というか、声が! 声がすごいのよ。
ちゃんと役ごとに使い分けてる。
それでキャラクターがみえる。

あやめが一番インパクトのある役だけど、それ以外にもいろいろやっている。

目が悪い幾松の手を引く手代の定吉は誠実そう。
市井の人・印肉売りは軽味がある演技でおもしろい。これが一番いつものタソっぽい。
柏屋の男衆の声ははっとするほどかっこいい。こういう風にかっこよくもあれるというのが、失礼ながら発見だ。
心中後の嘉平次らを調べる捕り方役での「ハッ」という声にもしびれた。短い声に過不足がなく、裏方として生きる男の仕事ぶりに実感がある。

どの演技にも血が通っている。
そして声を使い分けるだけの能力と役の幅がある。

これらは普段の研鑽のたまものなのだろうな。例の余興とかを含めて。

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花組

Posted by hanazononiyukigamau