『鴛鴦歌合戦』東京新公を見たんだ・1

花組公演感想,花組

花組『鴛鴦歌合戦』東京公演の新人公演は配信で見ました。
9月14日(木)18:30開演。
私は先に大劇場で観ているので、そこからの成長や変化も楽しめました。

全体的な話として、本公演は映画に沿った役作りなんだなという印象を受けました。
東京では本公演を見ていないのですが、ムラで観た本公演と、先日テレビで見たのを比べると「似てる」と思ったんですよね。
基本的には皆さん原作の映画に沿った役作りをしていたかと思います。(ただし三吉は役の性格自体が変わってたかな)

それに比べ、新公は本公演をベースにして役の見せ方を変えてきました。
若い生徒さんたちの持ち味を生かした芝居でした。

主役・浅井礼三郎/れいん

れいんのれいざさんは、かれーちゃんのすがれた感じはなく、とても若い。
ことのちゃん演じるヒロイン・お春があまり若くない雰囲気なのもあって、同世代のカップルにすら見えました。

若くて素直で厭世観もないので、なぜヒロインに惚れちゃいかんのかという理由付けはピンとこなくなります。
が、それを除けばしっくりくるし伝わりやすい演技です。
(本役さんは設定上の年齢差を感じるので「こんな小娘に惚れてもなぁ」とか「若い娘の将来をどうこうしちゃいかん」とか思ってそうなんですよ、自分が幸せになっちゃだめとの思い込みだけじゃなく)

新公2番手・峰沢丹波守/みそまる

どこがどうと言うわけじゃないんですが、ムラの新公よりしっくりきました。
やっぱり上手い人です。
芝居も歌もよくて、舞台人としての技量があるのは頼もしい。
本公演での空丸の愛らしさから、がらっと変わった意気軒昂たるお殿様ぶり。芝居の流れを作っていく力がありますよね。

お顔立ちも身長も可愛いが、その中にもかっこよさを見せてきます。

刀が上手く差せなかったのはご愛嬌ですね。日本物は慣れてないと難しい。

ヒロイン・お春/ことのちゃん

めちゃくちゃうまい。
うまいんだけれど、それと路線娘役的なヒロイン性はまったく別なんだなぁ……というのをしみじみと考えさせてくれる新公ヒロインでした。

それはそうと、東京新公のことのちゃんはムラ新公からさらに生き生きしていて、現代の女優さんが演じるお春ちゃんになっていました。

映画原作のお春は、ひどいことをしたりつれなくあたる父親や男に対してもどこかで許している。
「チェッ」「キライ」とは言っても可愛げがある。
この作品に限らず、昔の時代劇の女性って基本的には男性を見限らないというか、頼るにしても反発するにしても「男性ありき」でスタートしている感じなんですよね。
それは時代性もあったと思う。(女ひとりで生きることが現代よりも困難だし、それを社会が許容しない)
あくまで「男性」に対する「女性」。
本役のまどかも原作を踏襲していて、甘くて可愛い。

対し、ことのちゃんのお春は本役に比べるとレトロな女優さんの持つ甘やかさが少ないのが面白かった。
表情ゆたかにコミカルに、相合傘してるお春さんはアホの子レベルでにこにこしてて面白いやら可愛いやらだ。
いろんな意味で芸人さんぽさがある。
きちんと、自分なりの「お春」で、新人公演の一つのカンパニーとしての『鴛鴦歌合戦』を作ってきたんですね。

16やそこらにゃ見えないがことのちゃんは歌に芝居に上手で、和物の所作もきれいなのはさすが。
そして、最後の幸せのくだりの長台詞をたっぷりと聴かせ、ここでヒロインらしさを出してきたは力技でした。

長としての最後のご挨拶まで立派でした。

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