『シャングリラ-水之城-』感想・5

宙組

氷に拾われた双子、雹と霙。
ものすごく美しい2人だわ。

雹のちーちゃんは悩める人。
氷の指示に従って空を追い、武器を向けるけれども結局は手を下せない。

氷の指示がおかしいことはわかっている。
けれど自分たちを拾ってくれた氷に逆らいたくない。

でも空だって海だって仲間だった。
王として奉じていた。

その追い詰められかたが悲しい。
死にゆくところの叫びがせつない。

そしてえりちゃん。
逆裁2のフランジスカといい、こういうコスプレ系な服装でツンな役どころをさせるとハマるハマる。
いつもの黒っぽい服もいいんだけど、帽子で顔を半分隠したチャイナ服のかわいさったらなかった。

最後、氷と水源の濁流に身をまかせようとするところは泣ける。
微笑みが優しいんだ。

水之城は彼らの殻だ。
傷つきやすい彼らを癒し、世界から隠す。
彼らの内面そのもの。

自分の強大な力をふりかざして外部の他者を攻撃し、同じ価値観をもった人のみで世界を構築する。

ほんとうに、夢だよな。
他人の都合や考えは一切無視して、自己の正当性のみ語ればいい。
自分と同じく傷ついた人々のみを仲間とし、傷をなめ合って暮らす。
そこに閉じこもれるなら永遠にそこに住みたいと思うような場所だ――傷ついた人なら、きっと。

だけどそこは崩壊した。

空は大人になった。
水之城という世界に疑問をもった。
だから、永遠にループする内面世界から命をかけて逃げなければならなかった。

雹もまた気づいていた。
自らの心に蓋をしていたけれども、水之城の価値観のゆがみ、それを指摘できない病み方に気づいてはいた。
自分の内面を守るために、あえて無視して生きていたけれど。

水之城が「城」という外形をとりこそすれ、実質が外部と遮断された世界を求めた彼らの内面の具現であるならば(って、私の仮定ですけど)、そこを侵されてしまった以上、みな死ぬ以外に選択肢はなかったんだろう。

外部を求めてつながっていける空以外はみんな。


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Posted by hanazononiyukigamau