『ルパン』感想・3
●すーちゃんとマギーさんのコンビは、面白いっちゃ面白いけど少々うるさく感じた。
音量的にも存在的にも。
彼らは「フラヴィ」「ガニマール」役というより「すーちゃん」「マギーさん」というジェンヌさんが求められるものをそのまま出してきたような感じを受けた。
シリアスにかたむく物語の中のコメディというスパイスなんだろうが、もっと根本的な部分で芝居を面白くできんものかとハリーに文句を言いたくなったぞ。
個人の「芸」じゃなくて、脚本で。
この手の笑いが自分の好みに合うかどうかで評価が分かれそう。
●コマのトニー・カーベットがすごく良かった。
コマは白い役もヘタレなかわいこちゃんもなんでもやれるけど、『黒い瞳』のシヴァーブリンや今回のトニー・カーベットなどのような悪役は絶品だ。
彼が出ると空気が変わる。
彼を表現しようとすると、かっこいいと気持ち悪いと凄いとがエンドレスで脳内をまわる。
うわぁぁぁ、なんだこの気持ちいいまでに気持ち悪い造形。
なんかすごいものを見たぞ。
イメージとしてはムカデ。
蛇ほど瞬間的に身の危険を感じさせるわけではないけれど、生理的に身を引いてしまうような怖さ。
カーベットは、他人がなにを思っているか興味がない。
でも他人がどう思っているかはわかる。
誘拐し犯そうとしている女に食事を用意するのも、それが偽善的ととられる行いであることはわかっているだろう。
また、カーラの歓心を買おうとしているわけでも罪の意識をあがなうためでもないのだろう。
私の中で、「共犯者」という言葉がしっくりきた。
自分が(相手の歓心を買うことを含めて)変わることはないから、相手が自分に染まるかどうかしかない。
相手を自分に引き入れるための手管。
そんな相手ではないと知りつつ、また結果などどうでもいいと思いながらやっていそうだ。
原作を読んだときはたんに卑劣でいやな男だと思ったのに、悪役であることはそのままにこうも魅力的に仕上げてくるとは思わなかった。
というか、原作ではただの下種だと思ったのに、ちゃんと宝塚の舞台に乗る「色悪」に仕上げてきた。
本当に素晴らしかった。
今回の芝居で一番見ごたえがあったのはコレだな。
再び観られるのが楽しみだ。
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