雪版ロミジュリ感想・1

2020-12-14雪組公演感想,雪組

さて、『ロミオとジュリエット』1月15日(土)11時公演の感想。

今日、一番いいなと思ったのは「愛」のせしる。

せしるは硬質な美貌のダンサーで男役にしては少々華奢な外見の持ち主だ。
だからビジュアル的な点やダンスの技量ではなんの心配もしてなかった。

ただ今まで回ってきた女役などは少々毒っ気のあるもので(『ワンダーランド』のアラビアの姫やらエリザの黒天使やら君愛での女装やら『ソロモンの指輪』の極楽鳥やら)、「愛」などという白い役ができるのかいくらかの不安があった。

完全に杞憂でした。

幕開きに「愛」は一人せりあがってくる。
白く美しく。
彼女の硬質な美しさは穢れをよせつけぬ清浄さを示しているかのようだ。
やわらかく微笑みをたたえて、気高く崇高な「愛」がそこにあった。

物語のはじめから神の愛のようにやわらかくそこにあったものが、ロミオとジュリエットの2人が出会ったところで動く。
「新たに生まれた」と言ってもいいかもしれない。

パーティーの場面で舞台から人が1人はけ2人はけして、舞台上にロミオとジュリエットが残されてデュエットするところで愛が息づきだすんだ。
それまで超然としていたのが「こうしていることが嬉しい」とばかりに表情に生気が加わる。
せしるを見ているだけで2人の感情がわかるほどだ。

舞台を支配しているのが「愛」であるような気がした。
ロミオやジュリエットはその体現者にすぎず、まさに神の視点から天上の「愛」が舞台を覆っているようにすら思えたほどだ。

モンダギューとキャピュレット両家のいさかいのときは静かに目を伏せて上から見下ろしている。
この悲しみの静けさがまた天上の存在だと思わせる。

そして2人の死をもって愛が成就されたときの穏やかさ。
せしるの微笑みが2人の魂の浄化を確信させる。

せしるの愛と対になる咲奈の死は、なにかがちょっと足りてない感じ。
もう少し鋭さか力強さか禍々しさか――があるといいなと思った。
2人は背を向けあってその実どこか一体となるものでないといけないのではないかと思う。
そうでなければ最後の愛と死が重なり合ってポーズをとる意味がわからない。


web拍手 by FC2

0