『凱旋門』感想・2

2021-02-11雪組公演感想,雪組

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――だいもんの声は物語を底上げしてくれる。

『凱旋門』は、そんなことを再確認した公演でもあった。

だいもんの声はいい。
歌えばいきなり物語に力を与え、うねりを出し、激動のドラマに歴史の厚みとそこに生きた人間の血の滾りを感じさせる。
仮につまらない話であったとしても、だいもんが最後に歌いさえすれば「なんかいい話だったね……?」となるのだ。(過去に何度かあった)
それが、元々ちゃんとした話であればなおさら、重厚さが加わった歴史的傑作に比するものとなるのである。

だいもんが演じるボリス・モロゾフは、ロシアからの亡命者。
芝居の中では「ラヴィックの友だち」という立ち位置ながら、歴史の傍観者のような、物語の狂言回しのような、一歩引いたところにいる。
主人公のラヴィックとも絡むような絡まないような――ということは、極論を言えばいてもいなくても構わないような役、と言うことすらできる。

それなのに、私にはボリスがラヴィック以上においしい役に見えた。
はっきりとした理由はわからない。
が、考えられる理由の一つは、元々そういう一歩引いたポジションのキャラクターが好きだってこと。マンガでも主人公じゃない微妙に脇のキャラが好きだったりね。

それと、もう一つ確実なのは「だいもんが演じたボリス」だったからだ。簡単にいえば演者の実力。
だいもんの演技力と、屈指の歌唱力でもって役を底上げした。
ボリスってこれでもかと歌うんだよね。
歌い出したらだいもんの独擅場だからさ。舞台を、客席を支配することができる。
私もその支配された一人だったってことだ。

特に最後のほうの歌はヤバい。
その作品が好きでも嫌いでも、とにかくだいもんの色に染められる。
『愛と革命の詩』や『復活』などでの、「なんかしらんがすごいもん見たわー!!」感はトップになった今でも健在だ。

――とか言っといて、一番ヒィィィとなったのはボリスの「俺も女性は行きずりに限っている」発言です。

ちょ、おま、いきなり何を言いだすねん!?
いや、気持ちはわからんでもない気もするけどさぁ!

って脳みそがそこで思考停止したわよ。
ボリスは亡命者だから、「お荷物」になるような特定の恋人は作れないという事情があるからなんだけど。
芝居の最中に、行きずりの相手とのあんなこんなを妄想しちゃって大変でした……。だいもんの色気は罪。

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