『月光露針路日本 風雲児たち』みてきた

歌舞伎,宝塚以外

歌舞伎座で『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』を観てきました。
「三谷かぶき」と題されているのと、ポスターその他からわかる通り、伝統的な歌舞伎とは毛色が違うものです。

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観たのは6月17日(月)16:30公演。
歌舞伎座にも当日券(幕見)があるんですね。
座席は100以上、加えて立見もできる。
3幕のうち1幕だけでもいいし、通しで購入もできる。
私が3幕通しで購入して4000円、前売りの一番安い席と同じです。

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誰かは分かる由もないが、歌舞伎を勉強しにきた風情の中高生くらいの男の子も来ていたりする。
一見さんらしき外国人も多いが、歌舞伎慣れてます感のある中高年女性も多い。

平日にもかかわらず立見の出る盛況ぶりであった。

・見てもらえば納得だろうが、すこぶる面白い。
東京住みだったら、あと何度か当日券で観たい。
(前売りチケットはほぼ売り切れである)

大黒屋光太夫の話である。
『おろしや国酔夢譚』と同じ舞台だ。
江戸後期、伊勢の商人が江戸に向かう途中で流されて露西亜へ到着。
日本へ還る道を探るも、なぜかどんどん日本からは遠ざかり、10年にわたる旅の途中で仲間は倒れ、ついにはエカテリーナ女帝に拝謁。
ようやく日本へ帰る手立てを得るが……という話。

あまりに人が死ぬので「皆殺しの谷」が宝塚で上演していた気がしたが、気のせいだった。
(『望郷は海を越えて』とごっちゃになっていた――『望郷~』も観たことはないのだが)

めっちゃ人が死にますが、基本的にコメディです。
10人以上死んでこれでコメディになるの!?ってなくらいです、でもコメディです。

現代劇の要素と古典的な歌舞伎の手法が混じりあってます。
日本の大学教授が最初に客をいじり、舞台に引き込むところからスタート。

次は難破した船の上。
登場人物と状況が紹介されるのですが、この段階で死にかけている人もいる。
この死にかけ表現がどことなくドリフ。

第二幕にはこれぞ歌舞伎!!な表現もされますが、コメディはコメディ。
馬も出てきますが(『一夢庵~』の松風みたいな)、見どころの一つは11頭の犬。

第三幕はエカテリーナ女帝が登場。
ベルばらっっ。
というか、『演劇祭』の出し物みたいやな……。

2人併せて175歳(?)のカップルも唐突に出てきて、ちょっとわけわからないが、末永くお元気で。

ポチョムキンはさすがの貫禄である。

これまでさんざん笑わせてきたところで、最大級に泣かせてくるのもこの三幕。
ついに帰国の途に着けることになったものの、露西亜に残る決断をせざるを得なかった人がいる。
1人は凍傷にかかり脚を切断、足手まといにはなりたくない、金銭的な問題もあるという理由で残ることにした。
もう1人は、凍傷にかかった彼一人を置いておけず、また露西亜に恋人ができたこともあって露西亜に骨をうずめることにした。

けれど、帰りたくないわけがない。

帰国する主人公にすがって大泣きし騒ぎ立てる。
見苦しさは全開だ。
「日本に帰れる」と言われながら10年裏切られ続けてきたから、帰れるはずがないと信じてきたのだ。
この10年の重みが悲痛である。

最後は日本に向かう船の上。
富士山で終わる幕切れも爽快だけでは言い切れないものがある。

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