『宝塚BOYS』感想・1

宝塚以外

大阪のサンケイホールブリーゼで行われた『宝塚BOYS』を観てきました。
たまたまですが、9月2日(日)12:30の大千穐楽です。

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戦争中の爆撃音、そして終戦の玉音放送から始まる舞台。
戦争を生き残った――というよりも、死に損なった(と、本人たちは自責の念に駆られている)男たちの物語。

プロローグの息の詰まるような一人芝居があったから、そりゃ「すみれの花咲くころ」を歌う乙女たちの声がより明るく聞こえる。
彼らが宝塚に思いを寄せた気持ちもわかる。
一人、また一人と仲間が増えていく。

登場人物は総勢9名。
宝塚歌劇男子部に入った7人の男性と、元は演出家志望の池田、そして男子部生徒の世話をしてくれるタモさん演じる君原さん。この君原さんも実は元タカラジェンヌなのだが、大劇場ができる前にけがで退団してしまった。
大劇場の舞台を踏みたくて、踏めずに終わってしまったのだ。
だから池田も君原さんも単なる関係者を超えた「宝塚BOYS」の一員である。

ずっと耐えてきた彼らに念願の台本が与えられ、演劇の稽古をする場面。
ただのおばちゃんだと思われていた君原さんが、元ジェンヌとしての姿を見せる。プロの娘役に戻るんだ。
普段は男子部生徒たちから「女」としては見られていない地味なおばさんだけど、彼女にも若いころはあって、見ていた夢があった。

乙女への戻り方が見事だった。この場面が一番ぐっときたのは、私も女でおばちゃん年齢だからかもしれない。
君原さんが「乙女」に戻っているところでうるうるきてしまった。

以前から宝塚歌劇の「男子部」というものには興味があって、先日買った『悲劇喜劇』に出ていた台本で泣いた。
そして急遽じっさいの舞台を観ることにしたんだが、観に行ってよかった。
こちらも泣けた。私だけじゃなく、ほうぼうからすすり泣きの声が聞こえた。

男子部生徒は不遇で辛くもあるけど、なぜだか「生きよう」と思える舞台だった。

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