『冬霞の巴里』感想・9

2022-06-12花組公演感想,花組

『冬霞の巴里』は暗い、暗いけど飽きないねぇ。演出の上手さと出演者の迫力に呑まれる。
音楽やダンスもすごい。

センターからの鑑賞でなくては発揮しない舞台演出があって、フィナーレの最初がそれでした。
黒燕尾の男役に背後から差し込まれる手、すごく驚いたもの。
(端席だと後ろにいる人が見えてるからそれほどびっくりしない)

・つかさギョームは芝居の最初と最後で印象が大きく変わる人物。
父を殺した悪人と思っていたのに、殺人に至るには兄に弱みを握られて脅されていたという経緯があった。
オクターヴに銃をつきつけられての告白が痛々しい。
でも「弱者」≒善良なわけでもないんだよね。誤認逮捕からアナキストに死者も出しているわけで。

・銃をつきつけられて呆然とするつかさに「剣での戦いで殺されかかってたのに気づいてなかったんか!」と思ったわ。
でも彼にとっては「お菓子をあげよう、みんなには内緒だよ」のころのオクターヴがまだ心の中に住んでるのかも。
(息子が大きくなっても「お前これ好きだったよね~~~」とかつての好物で今は好きじゃない食べ物を大量に用意しそう)

・ゆりちゃんは、前回はクソ野郎な高師直だったところからの貴婦人ですよ。なにこの振れ幅。
陶器のような肌感と抑えた表情が心を殺した高貴な女性らしい。
(でも貴族ではないのか……?)

・しぃちゃんとひとこが父子なのわかりみがすごい。
ゆりちゃんとひとこも作画的に母子っぽかったが、まさかの血縁なしだった。

・死人も映り込む記念写真が不穏すぎる。

「あの白い女の子だれ?アンブルの子ども時代ではないよね……?」からの正体が明かされるクロエ=琴美さん。
ひとこの写真集にも出てた娘役さんですね。
メイク次第でもっとキレイになりそう。

・美咲ちゃん、声がどことなくまどか似。

・うららちゃん、いつも可愛いわ……!
クロエの友人の女性なんだけど、ほどよい下世話さとほどよい気品、どこまで計算ずくかわからない機転の効き方がいい人よね。
オクターヴがギョームを刺しそうになってるところの「なんてスリル……!」でこれはあくまで模擬試合ですよアピールをして、一家の不穏さをチャラにするすごさ。

・ケンカの心得のあるお綺麗な坊ちゃんオクターヴさん。
寄宿学校で覚えたか。
(風と木の詩みたいなBL的な方向でしか想像できないが)

剣は使えるけど拳銃はへっぴり腰なのがお育ちなのでしょう。

・ことのちゃんのテレーズはパリの下町で貧しくお暮らしのはずだけれど、明るくて可愛いよね。
下町の癒し。
ちょっとした芝居が上手いわぁ。

・ジャコブ爺のヒロさん。オクターヴの出生の秘密を知る人物だが恨みを手放すことを知っている。
かれの存在がオクターヴの救いにもつながるはずだ。
恨みを抱えながら生きてくのは大変だから。

・お料理に時間がかかってる=ヴァランタンさんが殺してる……?
(何人かわからないけど凄腕だな)

オクターヴに撃たれて息も絶え絶えになりながらのほのかちゃんの凄い表情はつい見てしまうんだけど、けっこう長い時間で「お疲れ……!」という気持ちに。
そしてテーブルの下に隠れて、最後はテーブルと一緒にハケたのかなぁ、なんてことが気になる。

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