オクターヴたちの家族関係で思ったこと。
※ネタバレ含むので注意※
人の記憶には間違いがあって、また、同じ人であっても相手によって見える顔、見せる顔は違う。
2人きょうだいだと思っていたアンブル(美咲)とオクターヴ(ひとこ)にはもう1人姉がいて(イネス=琴美くららちゃん)、オクターヴはそれを完全に忘れている。
「血がつながっている」とアンブルとオクターヴは思い込んでいるけれど、実はつながっていない。
アンブルとイネスはクロエ(ゆり)の連れ子で、オクターヴはオーギュスト(しぃちゃん)がイネスと再婚後に他所で産ませた子だから。
イネスに育てられたオクターヴが自分の両親をオーギュストとイネスだと信じているのはともかく、アンブルもオクターヴの母がイネスだと思っているのは不思議だった。
母の妊娠期間を見ていないのに、いきなりポンと出てきた弟を不審に思わないのかと。
アンブルはオクターブの思い込みに合わせてるような感じではないんだよね。「もし血がつながっていなかったら」とオクターブといっしょに歌ってるので。
でもオクターブが生まれたときにアンブルもまだ幼かっただろうから、特に疑問に持たなかったのかもしれない。
イネスのことはどうなんだろう。
オクターヴは彼女のことを忘れていても、アンブルもいっしょに忘れていたんだろうか。それはオクターヴに合わせていただけなのかな。
オクターヴの「姉」として、共犯者としてオクターヴといっしょにいるために。
自分たちには優しかった父・オーギュストは世間的には多くの恨みを買う人物だった。
弟・ギョーム(つかさ)の弱みにつけこみ悪事をもみ消させ、妻以外の女にも手を出し、妻の連れ子は自分の手駒とする。
イネスの死にも冷血さしか見せない。
商売上でも汚いことはしていた。傘売り・バルテルミー(まいこつ)が職を失ったのも、オーギュストのデパートが原因だ。巴里の裏町は荒廃する。
オクターヴたちの「正当な復讐」が、父の別の貌が見えることで反転する。
殺されるのもやむを得ない人物だった、と。
「お菓子を買ってあげよう。2人だけの秘密だよ」
オクターヴの持つ、父との甘やかな記憶。
優しかった父・オーギュストが殺されたがゆえに、オクターヴは復讐を決意する。
けれどその幸せな記憶を塗り替えるような思い出、叔父・ギョームとの記憶。
「お菓子を買ってあげよう。2人だけの秘密だよ」
大好きだった父を亡くした彼に優しくしてくれた叔父の姿もあった。
無意識に忘れていたのか。
(――ここの場面は私はとらえきれていない。
オクターヴには、オーギュストとギョームそれぞれと幸せな記憶があったのか、ギョームの示した優しさを無意識に「大好きな父」との記憶として書き換えてしまったのか。
あるいは、オーギュストとの記憶に「こんな叔父の姿もあったのではないか」と置き換えたのか。)
人の性格は多面的であり、対する相手によって見せる顔も違う。
また、人は自分の見たいように記憶も印象も変えてしまう。意識的にか無意識的にか。
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