『仮面の男』感想・2

雪組

途中から観て、舞台の使い方やセット、演出は興味深いなと思いました。

大きな橋の上に居並び歌う貴族たち、かおりちゃんの人間ミラーボール、影絵、映像を使っての馬で駆ける三銃士…。
拷問シーンをはじめとした残虐な場面をコミカルに描くところ。
時代は無視して携帯電話を出すところ。
首吊りのロープを天使の輪としての昇天。

いい悪いや上手いヘタはさておき、「こういう演出の仕方もあるのねぇ」と思って観てました。…途中までは。

ある程度みたところで食傷しました。
演出だけがあって中身がなかったので。

物語がないんです。
人間の感情がないんです。
描かれるべきドラマを置き去りにして、演出家児玉氏の「私こんなのもできる」「こういうシーンも面白いでしょう」という考えばかりが鼻についてくるようになったんです。

作劇も演出も、物語を描く方法でしかない。手段でしかない。
児玉氏は自分の得た力に振り回されて本質もなにもかも見失ってしまったかのようでした(元々「本質」が見えているとしての話ですが)。
魔法を手に入れた小学生が、深い考えもなく力を使いまくって迷惑をかけるドタバタコメディのようだと思いしました。
あるいは、ドラえもんのポケットを手にしたのび太(名作に失礼)。

というわけで、今回の作品は「児玉センセイの留学成果発表会」の様相を呈しておりました。
演出家の超自己満足的作品。
(これを見た後に『歌劇』の座談会を読むと殺意すらおぼえるぞー)

それでも面白くて出来がよければ文句は言わないのよ。
よければ、ね。

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雪組

Posted by hanazononiyukigamau