『春の雪』感想・2

2023-09-12月組公演感想,月組

清顕のみりおはとてつもなく美しかった。
宝塚でも抜きんでた美貌だ。
あの美しさで舞台に力を与える。
それでいて芝居も歌もいいんだから、ほんとうに凄いと思う。

「清様」は傲慢であることが仕方ないと思えるような美貌。
あの冷え冷えとした視線が清顕をかたち作る「美」の一部である――というより、傲慢であることによって清顕の美しさが完成しているのではないかとすら思える。

生まれ育ちもあって傲慢。
特に書生・飯沼に対する視線の冷たさには、時代的な身分関係を超えた清顕の性根がみえる。

だが清顕はプライドの固まりで本当に子供。
脆い。

恋に自我がゆさぶられるとすぐに「聡子さんがいけないんだ」と責任転嫁する。
なにもかも、自分に都合の悪いこと、自分の認めたくないことは人のせい。
あらゆるものに過剰反応し、自らを傷つけるものを許せず、意趣返しをする料簡の狭さ。

腹立たしい男だと思う。
幼いと思う。

だが、彼のプライドの高さ、他人への潔癖さ、繊細さゆえに自分を守ろうとするあまり他者への思いやりが欠如してしまうところが少しはわかるから、自分の若かったころを思い出して少し辛い。

さておき、みりおの清顕がすごいと思ったのは、脆さと傲慢さの切り替えの早さ。

清顕は、自分を愛している人間や目下の者に対してはどこまでも冷酷。
自分が相手を支配できると思っているから。

それゆえに、聡子を愛している自分を認められない。彼にとってそれは敗北だから。
愛しているがゆえに物事を考えすぎて動揺しているのに、虚勢を張る。
その内面の幼さからくる小ささと、飯沼に対する王者のごとき尊大なふるまいの差。
また、尊大さにふるまうことに疑問を微塵も感じていないところがまた……。

この切りかえを一瞬でするのが凄い。
そしてなんの違和感もない。
屈折している人間に一本筋が通っているんだ。

みりおの演技、好きだわ。

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