
ものすごく久しぶりにお能を観てきました。
9月13日(土)13時から行われた「TTR能プロジェクト『五十回記念』プレミアム公演」です。
お能っぽいものは学生時代ぶりかなぁ。
あれは、東京に進学した友だちが能だか謡だかのサークルに入って、金沢あたりでの発表会に顔を出したとかだった気がする。昔すぎてすべてがうろ覚え(笑)。
あと小学生か中学生くらいのときにちょっとだけ芸術鑑賞で能と狂言があったっけな? 気のせいかもしれない。
というわけで、お能のことは本でちょろっと読んだ程度の、ほとんどわからない状態で観にいきました。簡単にいえば無知なド素人です。
時間感覚
会場に到着したのが開演2分前。超ギリギリ。
慌てて席に着いたのですが、13時をすぎてもなかなかはじまらない。まずこれがカルチャーショックでした。定刻をきっちり守るのって宝塚とかミュージカル界隈では当たり前なので。
でも考えてみりゃ、音楽のライブなんかはもうちょっと時間の概念がゆるかったな。
メジャーな演劇界隈がちゃんとしすぎてるのか。
9月13日(土)13時から
○能 楊貴妃
○一調 遊行柳
○狂言 佐渡狐
○能 景清
「TTR能プロジェクト」というのを知らなかったのですが、TTRは主催者さんのお名前からきてるのかしら。
開演時にご挨拶があって、順々にお道具やセットなどが運び込まれてくる。
この流れも新鮮なものでした。
いつも見てる舞台って、最初のシーンのセットって開演時には完了されてるじゃないですか。でも能はそうじゃない。
能舞台だけがまずあって、そこに道具が運び込まれて、人も座って、ようやく演者(シテ、ワキなど)が登場するという流れ。
本編がなかなか始まらない。この時間感覚にクラクラしました。
私がふだん見ている舞台ってムダがない。
電車が定刻に走るように、上演時間が決まっており、アクシデントやイレギュラーがない限りそのタイムスケジュールで動く。
現代人の身体感覚に合わせて、濃密に、テンポよく話がすすむ。
音楽も心が沸き立つように、飽きないようにできている。
でも能は違うんですね。待つ時間も含めてのものなのでしょう。
それとも、舞台が作られて人が入るところからスタートしてると見るべきか。
あるいは、現代のように初めから終わりまでを根をつめるようにしては見なかったのかも。
脇正面
今回は脇正面のお席でした。
舞台を横から見るかたちとでもいいましょうか。
能役者さんの椅子を後見の方が準備しているのとかも見えて、これはこれで面白さがあります。
でも、お能に慣れてない人間にはあまり向きませんね。
動きの少ない能で、幽かな動きを丁寧に拾ってみるのに、横からだとわかりにくい。理解へのハードルが高いです。
少なからず能に親しんでいる方向けのお席なのでしょう。
能の謡は心地よい。
お経とか、百人一首(かるた)とかが耳なじんでるので、邦楽や謡も好きなのかもしれません。文楽も好きだしね。
ただ、眠くなる。
舞台上の動きが少なくて、心地よい声に聞き入っているとぼんやりとしてきます。

眠気は生理現象なのでいかんともしがたいところでありますが、無料の冊子をいただけたので、その本を読みながらだと大丈夫とわかりました。
謡曲の詞章が書いてあるんですよ。客席も明るいので、冊子を見ながらお能を鑑賞してる方も多数。謡など、習っておられるのかもしれません。
詞は流儀によって異なるらしく、目の前で謡われているものとは違うときもあります。その違いがまた目を覚ましてくれる。
文字で読むと言葉の意味もわかりやすい。
ただ、文字ばかり追ってしまうと舞台上の動きに気づかないこともあるわけで。
国立文楽劇場にある、舞台上部の字幕ってほんと親切だよね。
楊貴妃

『楊貴妃』は玄宗皇帝の命令を受け、楊貴妃の魂を追って道士があの世の蓬莱宮へ赴く話。
舞台には楊貴妃と道士が登場します。
舞台と客席が溶け合うようにゆるゆると始まった中に、耳をつんざく笛の音で舞台と客席とを裂かれるような幻覚にとらわれます。
舞台が異界になったとでもいうか。
はじめは御帳台のような布で覆われた中にいた楊貴妃が姿を現し、最後には踊りだし……。
それまでの動きの少なさにまずは驚きました。能ってこんなに動かないものなのか。脇正面からだからそう感じただけで、正面からだと違って感じるのかな。
顔には面がつけられ、舞う姿で美女に見えるのはふしぎ。
景清
源平の戦いの敗者である平家方の武将・藤原景清がいる日向(宮崎)を、景清の娘の人丸が訪れる話。
娘で「人丸」という名に違和感を覚えましたが、母親が遊女なので、娘もそうなのかな。(遊女などは男名をつけることがあります)
年老い、視力を失った景清の敗残のさまを娘に見せまいとする姿や、娘に請われて在りし日の思い出を語る場面が見せ場でしょうか。
日向で老い衰えた景清の声音と、娘のために、「悪七兵衛」と呼ばれ果敢であったかつての姿をほうふつとさせるような語りの差がお見事でした。
耳に心地よく素敵な舞台でした。
でも正直なところ、お能は私の手に余る……というところでしたが、私の無知ゆえなのでしょう。
これがなにかのきっかけになるといいな。


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