『ドン・カルロス』感想・1

雪組

雪組公演『ドン・カルロス』3月18日(日)の公演をダブル観劇してきました。

話がまともっていいなぁ。
出てくる人たちがまともっていいなぁ。

“話がまとも”というのは前の雪組大劇場公演がとってもアレだったので、あれと比較してまともだと判断してる可能性がないとは言い切れませんが、たぶんひどくはなかったよ。
わかりやすかったし。

キムシンなのに「愛」「愛」連呼してないところと説教くさくないのがよかったです。
みんなで合唱する「心から心へ」がいくらかその気配があったけど(予想どおり「サーカス魂」風味だった)、耐えられるレベル。
――というか、心優しい人はこれを聞いて涙したり心温まったりするのだろうか。私はこの「さあ感動しろ!」なテイストで逆に引くのだが。

あと、メインキャスト以外は人間大道具感アリアリです。
ほとんどの貴族の青年や女性たちは名前とセリフはいちおうありましたが、たいして必要性の感じられない役でした。いてもいなくても同じ。
とりあえず集団で出てきてしゃべって歌って踊って…でもそれだけ。

そのせいかときおり眠気に襲われました。
初見の午前公演で早くも意識を失いかけ、午後公演では終盤の異端審問の場面で完全に意識が飛びました。
話の盛り上がりどころが分からん…。

話の流れはたぶんちゃんとしていて、楽しい場面もあるんですがね。

演出への文句はさておき、出てくる人たちの中でも、特に主人公とヒロインがちゃんとした人だというのがありがたかったです。

知性と分別があって冷静で、状況判断もきちんとできる。
それでいてとてもキュートだ。
人情味も心の温かさもある。
なんてまともで素敵な人たち。

王子のドン・カルロスと女官のレオノール。
身分差ゆえに恋は許されない。
だが、互いに愛情をもって接することができる。
互いを正しく思いやっているのが伝わる。

そんな2人だからこそ、死を目前にしたドン・カルロスに石垣を登って会いに行くレオノールに心打たれる。
若いけれど分別のある2人の命がけの行動だから。

でも2人がこんな目に遭わなきゃいけなかったのは、ようはまっつのフェリペ二世が悪かったんだよな? な?
ついでにあゆみちゃんのイサベルが悩みゆえに冷静な判断を欠いて傍目に紛らわしい行動をとったからだよな?

こんな夫婦(実父と義母)のためにうっかり命を落としかけたカルロスさん、お疲れ様っす…! と言いたくなりました。

特にフェリペさんたら苦悩しまくってんの。
ヒゲも生えたいい大人が苦悩するシーンというのはなかなかに楽しいものがありました。
猜疑心からくる幻覚に「やめろぉぉ」と頭をかかえうなだれるヒゲ男フェリペさん(40代・妻子持ち・職業君主)。

なんとも受け受けしく、私の笑いのツボをついてくれました(笑うシーンじゃないよ)。
受といっても誰が攻だって話ではないんですが。でもフェリペさんはいいおっさん受けだと思ったよ。
いやー、なんか楽しかったんだ幻覚のシーン。

本気でこの公演の一番のみどころはそこだと思ってます、はい。

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Posted by hanazononiyukigamau