暁版『ブエノスアイレスの風』を見たんだ・1

月組公演感想,月組

ありちゃん主演のシアター・ドラマシティ公演『ブエノスアイレスの風』のライブ配信を見ました。
5月22日(日)16時の回です。

初演はリカさん、再演はちえちゃんが演じた作品。
ちえちゃんの方はバウで観た記憶があります。
あれもけっこう昔ですよね。時の流れよ。

久しぶりに見て驚いたのが歌う人の少なさ。
ありちゃん演じる主人公・ニコラスとはーちゃん演じるフローラしか歌ってなかったような……? それとも見落としてる?
ヒロインや2番手すら歌ってた覚えがないんですが。

この歌の振り分け具合に「尖ってんなぁ……」と思いました。
昔のバウ作品だからできたことなのか?
『神々の土地』で実質ヒロインのイレーネ(うらら様)が頑なに歌わなかった以来の驚きでした。

暁ニコラス

ありちゃん演じるニコラス・デ・ロサスは元反政府ゲリラのリーダー。
政治犯として7年とらわれていた彼が釈放されるところから話は始まります。

スタイルがいいのは昔からですが、存在感が増しましたね。
背中で語れる男になりました。

基本的にはベビーフェイスなので「7年刑務所にいたって、あなたいくつよ!?」となりましたが、学生時代から反政府ゲリラやってたと思えば相応か。

タンゴは雰囲気重視のゆったりしたもの。
ブエノスアイレスの重い空気をまとって、元ゲリラの青年がひとりの大人になっていく様を表しているよう。
最近の宝塚ではもっと激しくテンポ感の早い振りが多くなりましたが、これはこれでいいものです。
ありちゃんとヒロイン・あましのスタイルの良さ、美しいラインも堪能できます。

政治犯として捕まっている間に時代は代わり、民衆が選んだリーダーが政権をにぎるようになった。
しかし汚職はつきず生活の辛さは残っている。
それでも「民衆が選んだ」と苦さを呑み込んで生きていくところにニコラスの良さがありますよね。

しかし時代の変化を受け入れきれなかったかつての相棒・リカルド(おだちん)は違う道を模索し、自滅していく。
リカルドを喪ったニコラスの悲哀は胸をつくものがありました。

風間リカルド

毎度思うんですが、おだちんって何者なんでしょうね。
夏目雅子さんの姪で、プロゴルファーを父に持ち、幼少期から「死ねばいい!」と叫ぶような宝塚のガチオタで、青学高等部出身のいわゆるいいところのお嬢さんであろうという経歴はさておきの話で。

おそらくそれなり以上のご家庭で、ふつーに(かどうかは微妙にツッコむ余地がある気はするが)日本で育ったのに、あんなに「元ゲリラ」がハマるってなんなんだっていう。
土くさいの似合う~~~~~。
ヤバい男の匂いがする~~~~~。

おだちんにかかると「役を演じている」というより、骨の髄までその人になりきっているという感じがするのが怖いところで。
なりきってるというか、その人の皮やにおいまで身にまとってしまってる感じがする。
血が、育ちが、日本人とは違う感じがすごいんですよ。
日本の、いいところの、妙齢のお嬢さんじゃないだろうほんとは。
なんとなく日本人にあまりなじみのないところで育っててほしい。そのほうが勝手に納得するから。

風間リカルドはヤバい人でした。
ニコラスの盟友で、元ゲリラで、時代の変化に納得できず、焦っていて、崩れていて、とにかく生き急いでいる。
ニコラスに諫められてもどうにもできない焦燥感にひりつく。

武器商人(れんこん)とのやり取りが物語のハイライトじゃないかと思うほどの迫力でした。
息をのむ。
上手い人と上手い人の二乗でとんでもない場面になってましたね。

妹・リリアナ(まのんちゃん)との関係性は色っぽいというかなんというか……。
リカルド兄貴、リリアナへの絡み方はけっこうクソなんですけど(笑)、でも押し倒した形で「ニコラスのところへ行け」みたいに言うのはなんというか反則やろ!!!!
うっかりリカルドが可哀想になるじゃないか!!

で、風間さん、ほんとに日本人の女の人なんですか……?

なお、ブエノス配信のあとで『IAFA』を見たので(ドジっ子フェリックスは可愛い)、振れ幅の広さにほんとおだちん何者なのよ感がすごかったです。

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