ライブ配信で見た月組全国ツアー公演『花の業平』~忍ぶの乱れ~、5月10日(土)13時公演の感想です。
できれば生で観たかった……なんで今回、梅田の土日が1日しかないのよ、しかもゴールデンウィーク明けという休みづらい時期に。
梅田以外の地域もやたらに平日が多くて、この勤め人には遠征しづらい日程にはなんか意図があったんでしょうかね……。
というわけでライブ配信です。
まだしも配信があって、そして私が休みの日でよかった。
『花の業平』はかねて良作と名高く、高い期待値が裏切られることない作品でした。
文学性ゆたかにして台詞に香気があり、人間の心の機微も描く作品。
人の心は生々しくもありつつ、ロマンに落とし込むのが柴田作品ならではです。
もっとも、生臭くなかったのは今回演じた月組生の性質や力量にも因りましょうか。
柴田作品の好きなところは、男女の恋愛を軸に置きつつ、政治がからんでくるところなんですよね。
藤原氏の隆盛により追いやられた在原氏、伴氏、橘氏たち。
業平はもはや出世を望まずに生きていたが、自らの権力のなさを悔やむのが愛する高子が藤原氏の政争の道具にされるとわかってからというのがいい。
高子をさらうことは、業平にとっては自らの恋ゆえであり高子を救うことでもあるが、藤原氏に楯突くことでもある。
『源氏物語』で藤壺との密通(こちらは世に顕れていないが)、朧月夜との密会により右大臣家の勘気をこうむり須磨隠棲に追いやられた光源氏を思い出した。
(光源氏のモデルの一人が業平と言われているのだから当たり前でもあるか)
もうひとつ、女は女の論理で生きているのも好きなところ。
脇の人たちも、感情と考えをもって生きている。
業平と高子が密会していた五条第は、后の住まう館。
ここの主・太皇太后の順子(みとさん)が二人の逢瀬を許容しているのですよね。
彼女もまた、政争の道具に使われた辛い身の上だったから。
男たちがなんと言おうと、唯々諾々と従ったりはしない。
ヒロインの高子も熱く血を迸らせる。
自分の運命に翻弄されて泣くが、血の涙を流すがごとき心を持っているから美しいのだ。
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