ライブ配信で見た月組全国ツアー公演『花の業平』~忍ぶの乱れ~、5月10日(土)13時公演の感想の続き。
在原業平/ちなつ
ちなつ業平の雅やかさは素晴らしいなぁ。
柴田作品の主人公って、現代の倫理観や恋愛観とは少しズレるところがあるんですよね。
そのズレを、演じてる人はマゾかな?というくらいに愚かさを露悪的に見せる人もいれば(例:だいもん)、悪逆として生々しく出してくる人もいる(例:みりお)。
それに対し、ちなつの業平はどこまでも清く美しい。あくまでロマンのうちにある。
どれほど女に言い寄られても酔わず、高子を愛する瞳が真っ直ぐだからだろうか。
藤原氏の台頭によって除目が無縁である(出世できない)ことを世の流れと受け流していた業平が、高子ゆえに権力を持たない自らを憂うようになる。
このままならなさに心を痛めるさまも優美で、稀代の歌詠みで情けを知る貴公子らしさがある。
ちなつ業平は、高子の入内が決まっての乱れようも美しい。
芳醇で艶麗な色気だった。
ちなつ業平のお姫様だっこやらおんぶやらきれいだったな。衣装もあって大変だろうに。
藤原基経/おだちん
なんて平安貴族が似合うんだ、おだちん……。
すっぴんの濃ゆさからはけっこう想像がつかないんだけど。
というのはおいといて、こちらもはまり役でした。
ちなつ業平、あまし高子同様に、れいこちゃん時代の大劇場で上演された『応天の門』と配役は同じ。
しかしながら、おだちん演じる基経も『応天の門』とは少しだけ違った性格で、その差異が面白い。
今作の基経に強めに感じたのは
・藤原良房(うーちゃん)のあくまでも養子であるという立場
・「藤原」対他氏の関係
道長たちの時代はまだ遠く、「藤原」がまだ盤石でないからこそ、追い落としてきた在原氏、伴氏、橘氏らとの権力闘争としてしか人間関係を見られない。
ひたすらに高子を恋う業平を理解できない。
また、妹・高子を後宮に入れようとするも多美子に入内を先んじられた基経は、「藤原」にあっても立場は強いとはいえない。
人臣の最高権力者である太政大臣・良房の養子として、高子を手駒に使わねば自身も安泰ではないという弱さもある。
『応天の門』の底知れない怖さのある基経ではなく、赤い血の通っていそうな若い基経でした。(だからといって善人というわけではない)
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