
雪組大劇場公演『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』4回観ての感想の続き。
貧しい生まれのジョージ・ブランメルは、父(ウィリアム・ブランメル=すわっち)の呪いに蝕まれつつも上流階級への足掛かりを得て、ボー・ブランメルとして成り上がっていく。
ただしそのためには本人の美貌と人目を惹く毒舌の他に資金が必要で、賭けを趣味とする貴族の悪友たち(ピアポントほか)が用立て、貸し付けていた。
豪奢な宮廷貴族がまとう夜会服の中に(中には過剰な装飾を揶揄したような衣装もある)、黒のシンプルな衣装で現れる朝美ブランメル。
端正である。
美しすぎる顔の良さを最大限に映えさせるための、引き算の美しさ。
口の悪さも、平民が王侯貴族に取り入るための作戦である。
端正な外見にペテン師のような口ぶりは、父の「貴族社会に入れ」という呪いの産物であり、ジョージの名前を捨てて「ボー・ブランメル」として生きる。
かくしてブランメルはプリンス・オブ・ウェールズ(せおっち)の親友となり、時代の寵児となる。
しかしブランメルの生まれは庶民、王侯貴族の遊びには慣れていない。
それが「狩り」。
生き物の命を奪い、人の手柄を奪う狩りは貴族のふるまいそのものである。
(まぁ単純に運動神経が悪いだけという可能性もあるが)
ブランメルは狩猟の場で滑稽な姿を見せるが、そこで顕すのは「ボー・ブランメル」ではない本名の自分でもある。
ゆえに、ここでハリエットと愛を再燃させるのである。
ハリエットと逢瀬を重ねて危ない橋を渡るころの、ブランメルのいけ好かなさが好きだ。
あーさはどうしても美貌がクローズアップされがちで、過去の職場でも「昔テレビで見たことがある。あの人なら(舞台で)見てみたい」と言われたことがあるくらいには、ヅカファン以外の食いつきも良い。
その美しさを生かし、また、ぶん投げるような芝居のさまが、「芝居の人」でもあるあーさの培った技術を見せつける。
また、ブランメルがハリエットを失いかけるところからの流れがいい。
荒れた部屋にブランメルを訪れるピアポントにハリエットをどうするのかと問われ、目に輝きを取り戻す。ブランメル流の悪口でハリエットを守り、自らは国外追放に。
口とは裏腹にブランメルを引き留めようとするプリンスに、最後の戦いを挑む。この、ハリエットを守るための露悪的な物言いの迫力も見物である。
しかし真実もあり、ブランメルが言う「あなたは服を着ていない」と「あなたは私を知らない」は地続きだろうか。
国外追放が決まったあと、ジェンキンソンにハリエットの庇護を頼む口調に傲慢さはなく、丁重である。
白い衣装(宝塚的にはつい卒業を思い起こさせる)を身にまとい、自分を追い落とした貴族社会の中を悠然と現れる。
ハリエットとジェンキンソンの庇護を見届けたのちは、翼を広げるようにマントを広げ、帽子を落として去る。「ボー・ブランメル」を脱ぎ捨てるかのように。
しかしだな、やっぱり最高の退団公演の演出すぎて……。
夢白ちゃんがあと数作残って、あさあや同時にこの作品で……だったらものすごくしっくりきたと思う。


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