『万華鏡百景色』感想・1

2023-09-07月組公演感想,月組

月組大劇場公演『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』を観てきました。
『フリューゲル -君がくれた翼-』の併演のショーです。

「芝居の月組」を強く感じさせるショーでした。
失礼ながら、華やかさに欠け、ややショーが弱いと感じていた近年の月組でこんなすごい作品が出てくると思いませんでした。
感覚的には『BADDY』を観たときに近いですね。
ウエクミが、自分がコケたら今後宝塚で女性演出家がショーを作らせてもらえないかもしれない、という覚悟で臨んで『BADDY』を作ったと読んだ記憶がありますが、ウエクミからの系譜を強く感じます。
ショーを作った2人目の女性演出家だから、という私の思い込みもあるかもしれません。

このショーが月組に合っているのは、作品自体が芝居に近いところと、作品性と月組の持つ湿度、情念が嵌っているからでしょう。

花魁と花火師の恋を描く江戸時代から、明治、大正と時代を渡っていくストーリー性に充ちている。
各時代においても、そもそもが芥川龍之介の小説『鹿鳴館』『地獄変』をモチーフにした場面がある。
さらには、時代を超えて主人公とヒロインをつなぐのが「付喪神」という、これまた伝承性や物語性をもつ存在です。
民族的な匂いもあり、月組らしい雑踏や土くささを感じさせる場面もあり。

パーッと明るい発散型のショーも好きですが、こういう泥沼に入り込みそうな、刺さる人にはどこまでも刺さるような作品もいいですよねぇ。
ていうか、オタクはだいたい好きなんじゃないか?こういうの。

中でも引きこまれたのは『地獄変』の場面ですね。
芥川龍之介の作品を元にした(これ自体、大元は『宇治拾遺物語』ですが)場面で、芥川≒良秀を演じるちなつの迫力と狂気がすごいんですよ。
芸術の鬼として、地獄の沙汰に呑まれていくのがわかる。
ちなつの見せる恍惚感、忘我感がとても「わかる」ものでした。
常人としての良心や常識などとは別に、狂気を宿して、狂気の中に生きる、我をなくす。

今回、栗ちゃんはこれを見せたくてこのショーを作ったんだろうなと思いました。

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