『風の次郎吉 ―大江戸夜飛翔―』感想・11

花組,専科

・ダブルヒロインのもう1人、目明しのあやめのべーちゃんはやっぱり可愛くて芝居がうまい。
江戸っ子で、昼間から酒を飲むようなキャラだけどそれでも可愛い。
女は愛嬌です。

「違うよ。あいつからはネズミの匂いがしない」みたいなセリフを言ってるときが好きだな。

「でもあたしは次郎吉さん派だよぉ」とかめちゃくちゃ次郎吉ラブ!を前面に押し出してるのに「全然気づいてもらえない……」のが切ない。

ていうか、あれでマジで次郎吉は気づいてないんすかね。
単なる友人的な好意と恋愛的な好意を分けて考えてないのか。
自分の恋愛に無関心なだけか。
あ、かよのことがあったから、恋愛は自分の中からシャットアウトしてたのか?

歌はやはり課題。声量がぐんと落ちるんだ……。
声はきれいで好きだし、あの「宝塚のヒロイン」的な愛らしさも好きなんだけど。

・三味線のお師匠さん・菊乃師匠にはゆめちゃん。
こちらも上手くていい声だ。
最近役付きよくなってきたなぁ。

次郎吉を相手にしているときの猫なで声と、それ以外の人を相手にするときのそっけなさの差がおかしい。
ちょっと待てといいたくなる(笑)。

あやめたちをなじるときも艶のある女ぶり。
言ってることややってることは無茶苦茶なのに、なんか可愛くて憎めないお師匠さんでした。
これも当たり役だわ。

次郎吉が「おっしょさ~んはきれいだな」みたいなことを唄ってるときの拍手がまた可愛い。

・ハッチさんは次郎吉の育てのお父さん。
ハッチさんが出るとやはり舞台が締まるなぁ。
娘っ子たちに「かっこいいー!」と言われて「おっさんをからかうんじゃねぇよ」と返すけれど、ああいう渋いおっさんにきゃあきゃあ言いたくなる気持ちもわかる。
いなせなんだよね。

次郎吉とのやりとり、お幸とのやりとりは泣けた。
ベタなんだけど涙腺をつかれるんだよ。

2幕初めの神田の祭りもかっこよかった。
姉は「肺を患ってるのにめっちゃ元気だな!」とツボってました。

・タソの三助はこれぞタソ! な役。
スカステなんかで見せる「天真みちる」のキャラを拡大させたような役で、タソでなければできないだろう。

おみやちゃんに「この三助さんといういい男が近くにいるじゃないか」(セリフうろ覚え)と言い寄ってすげなくされるのも、ニセ鼠小僧になってカッコつけるのも、「どうしておいらを知ってるんだい?」(2枚目風)と言うのも、どれもこれもおかしい。

中でも「三助さんが鼠小僧ならつきあってあげてもいいわ(いいわ)(いいわ……)」とおみやちゃんのセリフを脳内リフレインさせて「おみやちゃーん(ちゃーん)(ちゃーん……)」とハケていくところは最高だった。

最高だ! と思う一方で、あまりにもタソすぎてなんだか不満に思うのも事実。
タソは芝居巧者なんだよぉぉぉ!
なので「タソなのにこんな役を! でもめちゃくちゃ上手い! さすがッ!」と思う役を観たくなってしまうから贅沢なもんです。

ま、それは別の公演に期待しますか。

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