聖乃版『舞姫』感想・3

美味しい役、馳芳次郎はだいや。
ほのかちゃん演じる豊太郎の腕の中で死にます。
いまだに『冬霞の巴里』のシル×ヴァ(逆かもしれん)は最高だったなぁ……という身にはありがたい並びですが、さすがに豊×馳で腐を発動したりはしません。だいじょうぶです。二人とも公式の相手役がおられますんで、そこは節度を保っておきます。

だいやの芳次郎は明るい。
明るい未来しか見えていなさそう。

初演の、野犬のようなみつるとは違った役作りで、これはこれでとてもよかった。
地方の富裕な家庭に育った息子、というのが前面に出ていて、大らかな明るさがありましたね。女のヒモになってもそれはそれ、だっていつもばあややねえやに甘やかされてきたから。

そんな彼が2幕で悪い風邪にかかるが医者にかかる金もない状態に。
「私が稼ぐから」という恋人ミリィ(みおんちゃん)に「ほかの男の前で裸になった金なんていらねぇよ」と言う。
私費留学生として、日本人としての意地もあるでしょうが、芳次郎の心境の変化なのでしょう。

気弱になった芳次郎が「俺が日本に帰ることになったらついてくるか」と問う。
「バカ。行けるわけないじゃない。あんたはここで成功するんだから」と励ますミリィ。
どちらも愛のある言葉ですが、それが不幸につながってしまう。

素直に医者にかかっていたら。
どうにかして日本に帰っていたら。

馳は、死ななかったかもしれない。

だいやは三白眼に薄い唇というサド顔なのに妙に女に対して腰が低いかんじがあって。
豊太郎が部屋にきてエリスの思い出を話してるとき、ソファでミリィを低い位置から腰を抱いてるからかもしれない。

そういや、マイティーの番組でも「飛龍さあああん」と言いながら下から抱きついてたよな。あんなにでっかいのに。
下から抱きつくのはクセか…?

観劇前、ベッドでのだいやの開襟がすごい、中が見えそうで不安との声を読みましたが、ほのかちゃんが持ってきたワイン注いでるあたりの方がよほどヤバくなかったか。
ちょっとかがむと服が浮く。中身が見え……ない!!(よかった)
そういや全ツかなにかの女装でかなり身体薄かったよね?ってのを思い出しました。

それにしても身体が薄い。
肩幅はあるけど意外なほど厚みはないんですよね。節制してるんだろうなぁ。
今回、貧しさの中で亡くなる役でもあるし。

ミリィの言葉(ドイツ語)もわからないほど衰弱した彼が、豊太郎に会って意識を取り戻します。
望郷の思いを、悔恨を、そして日本の未来への想いを豊太郎に語る芳次郎は、つかの間、生気のない瞳に輝きを生じさせるんです。
ベルリンに留学してきたときの夢見る瞳と同じなのかもしれません。

芳次郎は亡くなるとき、「100年後の日本はどうなっているだろう」と豊太郎に語る。
これがある種の呪いのようになって、エリスと別れさせ、豊太郎を日本に帰す力になります。

芝居の力を感じる一場面でした。

だいや、一皮剥けたかもしれませんね。

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