・辛抱役の2番手相沢は1期上のホッティー。
三白眼の効いた怜悧な雰囲気が相沢の知性と一見非情なところにつながる。
しかし実際のところ、相沢は豊太郎の親友で、あえて憎まれ役を買っているだけ。だって、豊太郎をエリスと別れさせても相沢にメリットはないもの。手切れ金だっておそらくは相沢のポケットマネーでしょう。
無私の気持ちで豊太郎の力になる相沢は豊太郎を好きすぎる。
豊太郎の妹・清に想いを寄せて……とかでもないんだよね。たぶん。
ホッティーの歌もよかった。
というか、今回の『舞姫』組のメインメンバーって歌は少々あやしめなイメージだったんだけど、みなさん歌えててびっくりしましたわ。
ホッティーの相沢は初演のまっつに比べるとソフトな感じ。
まっつ相沢は日本の、そして男性社会の論理と力でエリスをねじ伏せていたように見えましたが、ホッティーはかなり女性に寄り添っているように思えました。
・ヒロインであるあわちゃんのエリス。
「宝塚の北島マヤ」と呼ばれたすみ花が初演なだけに比較されるのが大変であろう。とは思いましたが、予想よりはるかによかったです。
特に好きなのは豊太郎からプレゼントの舞扇をもらったところ。
要返しが「むずかしい」「できない」と言いながら軽やかに踊る。
この場面の天真爛漫さと踊り子らしいバレエの動きに、豊太郎が想いを深くするのも納得でした。
日本から相沢がきていると嬉しそうに語る豊太郎に不吉なものを感じ取る風情や、踊りながら体調の悪さを見せるところ、そして相沢から豊太郎の帰国を告げられて流産に至るところもよかった。
私は流産したことはないけれど、さもあろうという痛みが伝わってきました。
あわちゃんの歌もよかったですね。
高音もきれいでした。
・あおいちゃん演じる豊太郎の母・倫。
1幕終わりの「狂った歯車」で相沢や妹は語り歌うのに、お母さんは一言も発せず。
ひたすらにうろたえ自責の念から自らの「責任」を果たすんですよね。
黙して語らず、ただ行動を起こすのが武家の女性の責任の取り方らしい。
「愛より命より大切なものがあるの?」と歌うエリスには理解できない生き方だけれど、当時の武士階級ならさもありなんと思うよ。
幼いころに自分に「主君のためなら切腹も辞さない覚悟で」と教えた母の自害。
妹・清の婚儀も家長である自分に決定権がある家父長制ゆえに、母は自分をいさめるための諫死をしたのだと豊太郎には辛すぎる出来事である。
・けっこう辛い話の中で、心温まり一息つかせてくれる役がまいらの岩井直孝。
可愛いのかたまりでした。
上司の御機嫌伺いのさまがお気の毒でありつつも、ゆゆちゃんマチルダにかっこつけようとする(でも失敗する)ところがおかしくて笑った。
キザればキザれる花組男役なのに!
豊太郎にかける「くじけては、いかんぞ」の温かさ。
ひたすら可愛いまいら=岩井だったが、可愛いだけではなかった。
あと、2幕のホットワインのところでのクシャミのタイミングもすごくよくて感心したわ。
・2幕初めのホットワインでみそまるがセンターにきてるのすごい。
歌上手いわぁ。
みそまるは音校時代(予科のときかな?)娘役だったらしいし、身長的には今でも娘役ができそう。
でも、この人ぜったいにキャラクターが面白い人だからな。
(スカステのツイリーを身に着けるんじゃなくて、手に持ってるだけっての笑ったわ)
若手花娘だとある程度「娘役かくあるべし」な中で生きていかねばならんだろうし、そうなると面白すぎるキャラクターを封じる必要が出てきそう。
それはもったいないので、男役としていていただきたい。
ドイツに旅立つ若者・青木もよかった。
白の軍服が似合う。
・踊り子さんが「ウェルコーメン!」と言うと不穏な気がしてしまうのは『エリザベート』のせい。
・稀奈さん、やっぱりバレエ上手いわーーーー!
ヴィクトリア座の3番手ポジだよね?
・まだ仕事が残っているから、とほのかちゃんが机に向かう姿がめちゃくちゃかっこいいですな。
・エリスもミリィもあまりドイツ人ぽくないが(日本人の豊太郎や芳次郎のほうがビジュアル的にはよほど欧米系である)、柚長ひとりで「ドイツ人です!」感をバリバリに出している。
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