月組『エリザベート』感想・2

2020-12-26月組公演感想,月組

たまちゃぴ版の『エリザベート』9月1日(土)11時公演、2幕だけの感想。

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再演ものには再演ものならではの楽しみ方があります。
以前のバージョンと比べての違いを見つけること。
そして演者それぞれの持ち味や解釈によって生まれる芝居の違いです。

・「私が踊る時」のシシィの歌。
私の記憶にあるこれまでのシシィは「あなたのまーえーでー」と音を引くような歌い方だったんですが、ちゃぴシシィは「あなたのまーえーでっ!」とあごをクッと上げて挑発するような歌い方でした。
皇妃としての優雅さよりも、死に抗おうとする気持ちと野性味が強いシシィでしょうか。

・存在の仕方として面白かったのはたまちゃんのトート。

トート閣下は「死」の具現であるだけに、妖艶で中性的な男役こそ似合うイメージがあります。
それこそ花組版のみりおであったり、現月組であればみやちゃんのようなタイプ。
それなのに真逆の持ち味のたまちゃんがトートを演じるとなるとどうなんだ?と疑問符のつくキャスティングではありました。
ちゃぴさんシシィありきの演目かなぁとは思いつつも、そうはいってもねぇ。

たまちゃんの売りの一つは男役らしい体格。
あの立派な肩幅、背中、太ももがたまらなく好きだ!というファンもおられることを知っています。
妖艶さからはほど遠く、過去に振られた妖しげな役はたいてい「怪しげ」に分類されていたたまちゃんですよ。『花詩集100!!』のダルマとかさ……。
男らしいトートもありなのか? ろくに見てないけどウィーン版を思えば男らしいトートだってきっとアリなはずだ。

――などと想像つかないなりにいろいろ予想しつつ臨んだたまちゃんトート。

実際に観て強く感じたのは「母性」でした。
肩幅を裏切るような女らしさ。

子ルドルフが「昨日も猫殺した」と歌うところは「えっ、まじで?」とふつうに驚いているみたいだったし、そっと後ろから子ルドの肩を抱くのは「さみしいのね。お母さんの代わりに慰めてあげるね」とでも思っているみたいだった。

ドクトル・ゼーブルガーとして現れる「運動の間」の場面も、シシィに寄り添い、体をいたわる優しさが感じられた。
さすがは「サラダのお姉さん」。
人によっては椅子にのぼってのマントばっさあ!がヘンタイ的なプレイにしか見えなかったというのに。

フランツの浮気写真をシシィに見せるのも、これまでのトートはシシィをいたぶり、死にいざなうためだった。
それなのに、たまちゃんトートだと「こんな男やめておきなさいよ!考え直すなら今のうちよ!」と娘が連れてきた結婚相手を本気で心配するお母さんみたいなのだった。

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