花組『エリザベート』感想・10

花組大劇場公演『エリザベート』の感想の続き。
初日近くと、中日も過ぎてからではだいぶ変わりますね。

●仙名ちゃんのヴィンディッシュ嬢は、初日近くに比べて「孤高の女王」感がなくなっていた。
シシィと心通わせるまではいかなくとも、シシィにある程度呼応しているように見えた。

私個人の好みで言えば、初日近くの演技は過去作とは違った新しいヴィンディッシュ像で好きだったんだけど、今のほうが「シシィを中心に据えた『エリザベート』」としては正しいのだろう。

●一花のゾフィーはクールで理知的。

「(娼婦の宅配を)取ったことがあるのね、大司教様」も「よろしい、宅配を許可します」もコミカルではない。
政治には裏の部分があって、結果のためには必要な手を尽くすのが当然、だから少々のことでは大騒ぎしない。
策略を練るのも手腕のひとつ。

「陛下とて男ですから」と息子について言われても、そんなのは当然としか思っていなさそう。
息子べったりではなく、為政者としての切れ者ぶりのほうが強く出ている。

だから「マダム・ヴォルフのコレクション」がやってきても確認だけしてその場を去る。

このクールさがいいんだよなぁ。

歴代ゾフィーはそれぞれに素晴らしかったけれど、それでもこの場面の演技だけはあまり好きじゃなかった。
今回の終始落ち着いたたたずまいのほうが好きだわ。

●今回の『エリザベート』は、トートはどこか人間っぽく、シシィはエキセントリックさがなく、ルキーニにも狂人の激しさはない。
全体に穏やかである。

ゾフィーはシシィの敵役のような形で登場し、「障壁」として立ちはだかる。
ゆえに強い演技を求められた。

が、今回のメンバーの中では、一花くらいの演技のほうが全体のバランスがとれていいのかもしれない。

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