●作品の予習をろくにせずプログラムも買わずに観てしまったため、1度きりの観劇ではいまいち話を把握しきれていません。
特に前半はティリー伯爵夫人とマドモアゼル・リディアンヌとユー男爵夫人をごちゃごちゃにしたまま筋を追ってたので……。
悔しい。
それはそれとして感想の続き。
●この物語の愛憎関係を図にあらわすとたしかこんな感じになります。
ヴァリエ ⇔ シモン ← ビロドー
↑
マドモアゼル・リディアンヌ
マドモアゼル・リディアンヌ以外は全員男性です。
シモン(彼がのちに囚人となり、神父・ビロドーの前で芝居をうつ)があらゆる人から愛されることが前提となるんですが、シモンに多くの人から愛されるに足る資質がないとこの作品は成立しません。
仲原さん演じるシモンには、それを納得させるものがありました。
美貌とさわやかさ、青年の荒々しさ、繊細さ…。
彼を中心に物語が進むのがわかります。
●同性愛が核にある作品であるのはわかってたのですが、キスシーンとかいちゃいちゃしてるシーンとか、どうしようかと思いました。
だってリアル男性なんだもん、あの人たち。
こちとら四半世紀を腐として生きてますが、そうそう見る機会のあるものではございません。
後方席に座ってたんですが、オペラでガン見してる人が少なくて、自分がしてもいいものかどうか悩みました。
――もちろんしたけど。
だって演技的にどういう表情してるかとか気になるし!(エロ目的じゃないよ! と言い訳)
オペラ使用者が少なかったのはみなさんリピーターだったからかしら。
一番びびったのがバスタブに立つシーン。
後姿ですが…まっぱ?
さらにそこからはじまるラブシーン。
えええええとオペラ上げていいですか。
すごい躊躇するんだけど、回りあんまりオペラ使ってないし。
で、オペラで見ました。
不覚にも泣けました。
2人がすごく幸せそうな顔してるんですよ。
相手を愛おしそうに見てるんですよ。
シモンの仲原さんとヴァリエの松村さんの出す雰囲気がすごい。
濃密なんです。
空気と感情の震えがこちらにまで伝わってくるようで、作り物の舞台であることを忘れさせるような演技でした。
役者ってすごいな、と感動しました。
●そしてそれを見ているヴァリエの母・ティリー伯爵夫人。
彼女もまた幸せそうな顔をしている。
息子たちのラブシーンに乱入してるんだけど、「続けて」って――、いやいやいやいやふつうムリだから! とつっこみつつ、この奇妙な関係に天上の愛を感じました。
宗教画のような神聖な美しさがありました。
この「息子が幸せであればいい」という心は、なんなんだろうな。
彼女は夢の中に生きているような人で、現実を受け入れられません。
でも彼女が唯一、2人を祝福してくれる人だというのが、幸せであり不幸であり――。
彼女は死を望み、息子・ヴァリエの手にかかります。
彼女の大好きな場所で、彼女の望む死に方をするんです。
この亡くなるときの生き物としての反応もすごかったし、くびり殺すヴァリエの嘆きや叫びも真に迫るものでした。
●シモンとヴァリエの2人は逃亡しますが、それを追うビロドーのねっとりとした執心が怖かったです。
ストーカーです。
でも、だからこそ、あの結末もわかるのです。
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