ZOOM講演・日仏演劇協会「上田久美子のフランス演劇体験」

宝塚以外

昨日6/3にZOOMで開催されていた日仏演劇協会「上田久美子のフランス演劇体験」を見ました。

日仏演劇協会公式ホームページ on Strikingly

1960年設立の日仏演劇協会は、日本におけるフランス演劇およびフランスにおける日本演劇のより深い理解を促進すること、そして日仏両国の演劇人の交流を目的としています。

元宝塚歌劇団の演出家・上田久美子氏がしゃべりまくる約1時間半です。

日本時間の夕方18時から始まった講演ですが、ウエクミのいるフランスのルマンは朝の11時。
室内にも明るい光が差し込んでいます。

フランスの演劇の状況にはおよそ詳しくないし、それ以外もなかなか知識と理解が追いつかない部分はありましたが、それでも興味深いところはいくつかありました。

ウエクミがなぜ京都大学で仏文を専攻したのかに始まり、大学時代の留学体験や、現在のフランスでの演劇の在り方などが語られました。
大学で仏文専攻で、現在フランスに留学中のウエクミですが、なぜフランスなのかというのは大学時代にさかのぼります。

以下、うろ覚えですが――。
(なので間違ってたらすいません)

ウエクミが大学2,3年のころ1ヶ月、冬にイギリスに語学留学したときの話。
陰鬱なイギリスに対し、休みの日に出かけたフランスには印象派のような光があった。
イギリスの食事事情に悩んでいたが、フランスのオルセー美術館前で買ったチーズとハムのサンドイッチが美味しかった。(食事も大事よね)

また、フランスで受けた人種差別もウエクミに大きなものを残したようです。
あちらではチケットを出すときなどに「ボンジュール」などと声をかけるのが普通。しかし(上手く話せなくてか、内向性ゆえか)そう言わずに黙ってチケットを出したらモギリのおじさんにチケットを床に投げられてしまった。そして拾っている姿をモギリのおじさんが向かいのおじさんとニヤニヤ笑っていた。

――日本だと、おそらくこんな経験はないんですよね。
内心思うことはあっても、仕事は仕事として体裁を整える。
けれどフランスだと、日ごろのフラストレーションが何らかのきっかけで表面に出る。

良いことと悪いことのコントラストが大きい。
この両面性に「生きている感じ」がする、とウエクミは思ったらしい。

――『BADDY』ですよね。
ピースフルプラネット地球での息苦しさ、BADDYに惹かれるGOODY。ぐるぐるぐちゃぐちゃ。
善悪が混然一体となった世界。いや、郷に入っても郷に従えぬぶしつけな相手に相応の対応を取るのが「悪」かはわからないけれど。

演劇や劇場の話も面白かったです。

フランスの観客のありようが日本とは違うんですね。
フランスで好まれるものが日本ではあまり好まれないが、ウエクミには性に合うようです。

日本では劇場での飲食は観劇のオマケ程度ですが、フランスだと半々くらいの感じみたいですね。
そもそも観劇に行くのが日本より身近なんだけど、「この役者さんが出てるから」あるいは「この作品だから見る」のではなく、「その街でなんかやってるから見に行こう!」くらいな感じ。
そして劇場で人と会うのが楽しい。

劇場はゆるやかなコミュニティで、排他的ではない。
劇場のバーで食べるのを目的で来ている雰囲気すらある。
観客は劇場での料理をとても楽しみにし、劇場や俳優も力も入れている。
花より団子の楽しみ方なのだそう。

あと、今はイラク人の俳優さんと共同制作しているそうで、かれの経験がものすごすぎるんですよね。
日本では味わいようのない経験をしてフランスにいる。
なにせ、そもそもが戦場からの逃亡の果てにフランスにいるので、スケールが違う。

また、かれの母君の話も。
男尊女卑がひどくて、日本ではDV扱いされるようなことをされても10分後には笑っている。
従わない女は殴ってしつけるのが当然みたいなところがあり、当然夫である父君も母君を殴るのだけど、殴られたあとには父君を盛大にののしり、かつ笑って踊っているようなところがあるらしい。
ただの気の毒な女性、虐げられた女性という日本的な感覚には収まらないところがあって、そういう肌感覚での差にウエクミは強い興味を惹かれているのだろうなという感じでした。

ほかの小ネタとして。

「文化人類学」のレヴィ・ストロースが一番好き。
卒論は印象学のモーリス・ルメロ=ポンティ。ただ、諮問で「どこが(名前の)中黒かわかっていますか」と突っこまれるレベルだったらしい(笑)。

ドイツの演劇にも興味があるが言語の壁があるのでフランスにした、という話もしていました。

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宝塚以外

Posted by ゆきたろ