月組版『愛するには短すぎる』感想・2

2023-05-17月組公演感想,月組

好きなシーンについて。

・フレッドとバーバラが幼なじみだと互いに気づいて、抱擁する前の一瞬のちゃぴのタメ。

素晴らしい偶然がもたらした現実を受け止めきれなくて、喜びが支配して動けなくなるあの瞬間をあらわす、あの動きが素晴らしいな。
客席で観ていてニヤっとした。

・別れの場面で足早に立ち去ったバーバラに向けるフレッドの叫び。

洗練されていて女に不自由しなさそうなフレッドが、すべてをかなぐり捨てて、とりつくろいもせずに裸の心で叫ぶ。
本当なら、すごくかっこ悪いんだ。
だけど身も世もない必死さが胸をうつ。

まさおとちゃぴは、2人ともまっすぐでまじめでひたむきで、がーっと走っていく感じの人たちで、相性的に合ってるんだよね。
だから今回も「4日間しかないけど!」「船を下りたら別の人生を歩むの!」と言いながら、本当に真剣に愛し合っている。
愛し合ってるけどしがらみその他でどうしようもないから真剣にならないように……したいと思いつつ、結局真剣に悩む。

フレッドという男に対してはすごくツッコミいれたいところもあるんですよ。

これって要はマリッジブルーになって(違うか?)モヤモヤを抱えてたところに昔結婚の約束をしていた女の子がかわいい姿で現れたから息抜きしてたらうっかり本気になって、
でも元々いろんなしがらみはあるし、優しいといえば聞こえはいいけど優柔不断な男にはどうすることもできなくて、結局女の子が分をわきまえて説得して別れたって話だよね?
(こうして書くとなかなかに腹立つな――フレッド)

バーバラは男の身勝手に振り回されて傷つきつつも「この想いがあるからこの先も生きていける」とすっげーけなげなことを言うんですよ。

で、フレッドのほうはフレッドのほうでこれまた真剣に悩む悩む悩む(どう考えても諸悪の根源は本人なのだがな)。

おとぎ話のようなかわいい雰囲気もふんだんの物語の中に、はかない恋を真剣に生きる2人。

フレッドに無理に作らせた笑顔をみてうしろを振り返りもせずにずんずん立ちさるバーバラと、その背中にみっともなくも真剣に叫ぶフレッドがいとおしかったです。

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