19日の16時公演と20日の12時公演の2回を観てきました。
すごく面白い。けど消耗するわー。観終わるとぐったりします。感情がガンガン揺さぶられるからかな。
ストーリーも音楽も好きで、キャストもよくって満足です。
特にいいわぁと思ったのはすみ花・かいちゃんのダブルヒロインとみーちゃん。
主役の横にいるこの3人の芝居や存在感ががっちりしていて見ごたえがありました。
まずは一人目のヒロイン、ジューン・マシスのすみ花。
落ち着いた演技がすごくうまい。シナリオライターとしての知性がみえる。
そして若くして離婚経験のある女性としての強さと華やぎとすれたところのバランスがすごくよかった。
今まで見たすみ花のヒロインの中で一番好きなくらいかもしれない。
「ラテンラヴァー」の歌は何度かあるが、それらがすべて違って聞こえる。場面によって違う心情で歌う。
甘く響くときも絶唱として聞こえるときもある。
オレンジを盗もうとしたルディーと出会い彼に「ラテン・ラヴァー」の素質を見出して、そして帰り際に無邪気にキスをされて心が動く。
この幸せさがじわりとくる。
「待って」と思わず呼びとめた自分の行動に困惑しながらオレンジを渡す。
そして「チャオ」と言葉を交わす。
ここで歌われる「ラテン・ラヴァー」は始まりを予感させる。
甘さを楽しんでいるかのよう。
ルディーがナターシャと結婚し、小説家に転身したジューンのタイプライターに向かいながらの歌は過去の思い出を楽しんでいるかのようだった。
「忘れたい」と歌い、苦さを噛みしめながらも決して恨んでも後悔してもいない。湿っぽくないのがよかった。
特にルディーの死を電話で聞いた場面は辛い。
ついさっき、再会して愛を再燃させたところなのだ。
はじめて出会ったときに交わした「チャオ」を、ついさきほどの別れ際にルディーはジューンにかけている。
これが最後の言葉。
ジューンは「チャオ」と返さず手をひらひらさせて受けるだけだったのが、始まりとのちがい。それが2人の終わり――つまりルディーの死を暗示しているのかもしれない、と考えたのはさすがに穿ちすぎだろうか。
死を知ってジューンはタイプライターに向かう。失ったものが大きすぎて、普段どおりの行動をとることで無意識に動揺を鎮めようとしているかのように思えた。
あるいは言葉をつむぐことで胸の空洞を埋めようとしたのか。
そして再び「ラテン・ラヴァー」の歌。
すみ花の絶叫は絶品だが、泣き叫ばなくてもジューンの心情は伝わった。
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