ボニクラ・3

かなめのクライドについて。

役を生きた凰稀かなめを初めて見たような気がした。

路線の男役で、目立つところ、おいしい役をあてがわれてはいたけれど、なんかしっくりきていないと感じるところがあった。
演じていて、特別下手ではないんだけど、今一つ印象に残らないというか。強烈ななにかがみえてこなかった。
これまでは。

でも今回は違った。
主演作とそうでない作品のふられた役を同列には語れないのかもしれないけど、でも今までとは違うと感じた。
一皮剥けたように感じた。

底冷えのする怖さ。
乾いた空気感と空虚さ。
それをかなめのクライドからは感じた。

外見的にきれいでかっこいい。
やさぐれたチンピラで、悪党だけど大物ではなくて、タチが悪そうな男。
ボニーを誘うくだりや「キスしていい?」のあたりとか、本心がどこにあるのかがわからない。

それがすごく怖くて、現実にはどこにいるのかわからない男だけれど、でも実感を伴っていた。

みなこのボニーについて、追加。

ボニーは「ママのところに帰りたい」と言う。
そこが珍しいなと思った。
他の宝塚作品だったら(もしかしたら宝塚以外の商業演劇でも)「あなたがいるからここにいる」「あなたとご一緒ならどこへでも」だよな。
恋愛至上主義が舞台を覆ってる。

恋愛を取らない場合は「子供に会いたい」だ。アンナ・カレーニナみたいに。

そういうものから、社会が要求する女性のあり方とかを考えてしまって、なんとなく気まずかったり居心地の悪さを感じたりしてしまってた。

でもこの話ではそうじゃなかった。

「ママのところに帰りたい」のボニーは、クライドとロイに心を引き裂かれてて、胎内回帰を求める傷ついた娘だった。
自分に戻ろうと必死でもがいていた。
見ていて痛々しかった。
ボニーを抱きしめてあげたいと思うほどに。
それほどみなこの演技がすごかった。

あ、1幕ラストのみなこの目の座り方が半端じゃなくかっこよかったです。

にしても、この作品を思い起こしてると自分の内面のシリアスなところが掘り起こされてしまう。
そういう意味ではめんどくさい作品だw
いや、作品自体は文句なくおもしろいんだけれども。


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