『蒼穹の昴』感想・3

・かつてのカチャは、体格や声質から線の細い男役(=よくいえばフェアリー系)という雰囲気でしたが、近年その殻を破っているように思える。

歴史に名を残す政治家・李鴻章としての大きさや知性を見せる。
一禾くん演じる王逸を引き立てるところもよかったし、今回の悪玉・まりんさん栄禄やまなはる袁世凱と対するところも迫力があってかっこよかった。
永禄や袁世凱と行き会ったところでは奴らなんて斬っちゃえよと思ったけど、裁判などによらず勝手に斬っちゃいけませんね(笑)。

・西太后ヒロさん。
出番もセリフも随一の多さで大変そうでしたが(さすがに何度か噛んでおられましたね……)、格式や権力を見せてくれる人。

男役の声をあまり変えずに舞台に出ていて、それだけに西太后の年齢や政治家らしさなども見えやすかったです。
甥の光緒帝(=あがちん)を愛おしむ歌もあり、いい役だな、と。

ただ、楊喜楨といっしょに引退するかと思ったら永禄たちに乗せられて政治を始めてしまったり……と困った人ではある。
うん、永禄たちが悪い。あそこで引導を渡していれば……ッ!

・今回の悪玉・永禄のまりんさんは、小者っぽさとずるがしこさ、立ち回りの上手さなどを好演。
ほんと演技うまいわぁ。
「お前……ッ!!」と何度心の中で思ったことか。

・出てくるときにロックな音楽になる黒牡丹さん。
舞台の上で華麗に亡くなる黒牡丹さん。
あーさに技だけじゃなく「できないと思ったらできないんだ」(≒人間、やれると思ったらやれる)と大事なことを教えてくれる黒牡丹さん。
すべてがかっこよすぎる。

病気のために顔を覆った布すら中二病が発動しそうでこれまた好き。

なにげにはいちゃんの使われ方がすごかった。切っても切っても眞ノ宮るい。
黒牡丹以外でも、龍の玉をもって踊ったり、まなはるの部下の軍人としてのセリフがあったりで、ほんといい役を貰ったし演じていた。

皆さん想像がつくでしょうが、踊ってるところは躍動感がすごいのよ。

軍人としてのセリフ声もかっこよくて、これまでダンサーとしての存在が大きかったけれど、芝居でも貢献できる「男役」になられたのだなぁ、と。

・貧しい育ちで文字も書けなくて学もないであろうに「柳絮のように」と難しい歌を歌い出す李玲玲=ひらめちゃん。
りゅうじょということばに馴染がなさすぎて「遊女?」とか考えてしまったわ。

・原作読んでないので、船の上でor日本に行ったら結婚式だ!ENDじゃないのにびっくりした。
そういう流れじゃないのか。身分違いだからか。

ていうか、ウィキ見たら別の人(かすみさなちゃん)と文秀が結婚しててびびった。
すぐ死ぬっぽいけど。

それはそうと、一言もセリフでも上手いし声がきれいでいいですよね、かすみさなちゃん。

・そらちゃん演じる順桂は言動が誰より過激だ。
見ていて冷や冷やするんだけど、歌えばモンゴルの風や大地や草、空が見えるようで、どこまでも透徹した純粋さが現れる。

だからこその、あの彼の行いなのかなと。自分に疑いのない人はどこまでも走っていく。
狂信的なところがあるからこその、あの透明さなのだろうか。

そらちゃんの歌はドラマを持つから、その力が怖い。
あの声の力で、かれのしたことがあたかも正しいかのように私は吞み込まれてしまう。
あの声は、セリフも歌も、舞台に厚みや重みを出してくれる。歴史の壮大さを見せてくれる声だ。

爆破が失敗するのは爆薬を手毬と間違えた子どもを守ろうとしてのこと。
順桂自身、妻も子もいる人なんですよね。
爆薬に自らの身を伏せたとき、自分の子どものことも思い起こしただろうか。

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