『神々の土地』感想・7

宙組

・信念によって生き、ぶれることなくその生を全うした人物たちの中で、ほぼ唯一「成長」をしたのがまどか演じる皇女オリガ。

不当なことを言われても反論せずに自分の殻に閉じこもって生きてきたロマノフ家の一員だった彼女が、ジプシー酒場「ツィンカ」でのやりとりからどんどん成長していく。
ドミトリーに恋したこともその後の成長の原動力となっただろう。
皇帝一家とは仲の悪いマリア皇太后の舞踏会に行くときのウキウキした感じが可愛く(これはドミトリーに連れてきてもらったからだけど)、その後の衝撃的な話を立ち聞きしてしまってからの「追い出したりはなさらないでしょう?」とすがるところに彼女の強さを感じました。
こういうこともかつての彼女にはできなかったはず。

ドミトリー、イリナ、ユスポフらもともと信念を持っていて、それに従ってきっちりと生きている人の中で、オリガだけが形を変える。
芽吹きを見せる。

それなのに、母に巻き込まれ、滅亡を目前にしていることを知りながら愛ゆえにそれを選択してしまう
やりきれない。
でも親子は、特に母娘は、そういうこともあるよなと感じてしまった。
病的な世界だとは思うけれど。

このやりきれない感じ、人の選択も意志もなにもかも、運命の上には大きな意味を持たない感じが「ロシア」なのかなぁ。

・皇帝一家がいろいろと辛い感じなので、すっしーさん演じるマリア皇太后が私の中ではかなりの救いだった。
タバコ吸ってハキハキしゃべって、ロシアを救うためには自分の息子や孫すら皇帝の座から下ろす決断ができる人で、革命を生き延びてアメリカに亡命している。
賢くてさばけていて、それでいて情がある人。

ニューヨークの場面でマリア皇太后の声を聞いたとき、観客である私がどれだけ救われた気持ちになったことか。
(ところでこの場面、ユスポフに「片思いというべきか」と言うところでヒィィってなった。ユスポフさん、バレすぎ……)

ドミトリーとオリガの婚約披露パーティーの場面、煙草を鉢植えでぐりぐり消すところも好き。

でも彼女が皇后アレクサンドラと折り合いが悪いのもなんかわかる。
アレクサンドラが煙草を嫌うのは、皇太后が煙草を飲むからというのもあるのかしら。

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Posted by hanazononiyukigamau