『幕末太陽傳』感想・5

雪組

・退団公演でワカメをかぶる人もそうそういないだろう。(コンブかもしれない)
ついでに天冠(三角巾)をつけて棺桶に入る人もそうそういないだろう。
金造役の大ちゃんです。
すごい役だがおいしいといえばおいしい。もう忘れられない。

昔のことなので観たわけじゃないですが、『殉情』の利太郎で退団した人もこんな感じだろうかと。

金造はおそめに騙されて心中相手に選ばれる。
「金ちゃんなら身寄りもないし」「下衆だし」「死んだほうが世のため」とさんざんな言われっぷり……だけど、それでも悲愴感がないのは大ちゃんの明るい持ち味ゆえ。
大ちゃんはきれいだから、ぼろくそに言われても本当はそうじゃないことを観客がわかってる。
これが暗い持ち味のビジュアルが微妙な人がやったらいたたまれなかったかも。
大ちゃんの浮世離れした美しさゆえに、リアルな世界から離れた物語世界の枠の中で納まったんじゃないかと。

心中のときの白装束は、芝居上は描かれていなかったけれど原作や落語などでは金造が用意したもの。
おそめのぶんだけでいっぱいいっぱい、自分のぶんはお金が足りなくてああいうつんつるてんな妙ちきりんなものを着ているということになってます。
でもタカラヅカなので「大ちゃん脚長いからなぁ……」って感じもしてくるのです。

・こはる役のあんりはすごくよかった。
きれいだし、女郎としてのしたたかさもすごいし、強くていい女。

嘘も方便でうまく生きてて、必要があれば啖呵も切るのが気持ちよくてかっこいい。

「わっちは女郎でござんすえ……嘘をつきますと看板かけて商売してるんだ」
「この身は爪の先まで金で買われた身。殴るならその金払ってからにしな」みたいな(きちんとした言い回しは覚えてないけど)

頭が切れるよねぇ。
「こういう女に転がされたい」という妄想の体現かな。

だいもん演じる高杉への思いもにじませながら、ベタつかず、あくまで美しく強く女郎としての性を見せていました。

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雪組

Posted by hanazononiyukigamau