『金色の砂漠』感想・3

花組

●ちなつ演じるジャハンギール王。

ほんと真ん中にいれば真ん中の、脇にいれば脇としての存在感を出す人だなぁ。
今回は別格寄りかな。
主人公たちの親世代でヒゲもつけておっさん(失礼?)で、でも色気のある役どころ。
王としての重みも厳しさも、親としての優しさも、愛した女への情も見せる。

ちなつすごいなと一番思ったのは、タルハーミネを斬らねばならぬと苦悩するところ。
呻きながら剣を振り回す様は、――よくギャグにならないなと。
あれ、ふつうの人がやったらネタだと思うんだけど、ちなつは歌舞伎かなにかのワンシーンのようにきちんと成立させていた。
かなりの力技じゃないかな。

あと、子ども時代のギィとタルハーミネがアムダリヤを訪れたところに彼もやってきて、子どもたちが去ったあとにアムダリヤと長椅子に倒れこむ。
エロい表情してるわけではないのに色気がだだ漏れていて――暗転するところもガン見しました。みんなしてると思う。

彼らが無言なのがまたいいんですよ。
互いに想い合っているのにそれを言葉にさせないことで王がアムダリヤに無理を強いている形とし、愛してはならない男を愛してしまったというアムダリヤ王妃の「罪」が彼女の心の枷とならないようにしているかのよう。
最もジャハンギール王の場合、アムダリヤの罪を背負っているというより、アムダリヤに愛されているかどうか自信が持てないまま無骨な接し方をしているだけなのかもしれません。

●ピンポイントで好きなところ。
くまくまちゃんたち女官が、数学教師のさおたさんが王族を傷つけたとして迫るときの空気。すっごく怖い。
あのとき、空気が如実に湿度を帯び、密度を増して揺らぐ。
あれは今思い出しても怖い。

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花組

Posted by hanazononiyukigamau