和希版『心中・恋の大和路』感想・1

雪組公演感想,雪組

雪組シアター・ドラマシティ公演『心中・恋の大和路』を観てきました。
7月24日(日)16時公演です。
主演コンビの忠兵衛・梅川はそらちゃんと夢白ちゃんです。

何度も再演を重ねている作品だけあってやはり名作。
忠兵衛の馬鹿さと梅川の一途さとこの世のままならなさと。
金さえあればの世にあって、親友・八右衛門の深い友情や手代・与平の純粋な想いも光ります。

この作品は初演が1879年、40年以上前の作品です。
しかし今見ても神がかった演出。古さをまるで感じない。
そりゃ若き日の谷先生もやりたがるはずだよ。
光の使い方、飛脚宿衆の2人の追いつめ方。
そして最後の雪山は舞台演出の極地です。

お祭りをしている道頓堀で、子どもたちの奥からお面をつけた飛脚宿衆がぬっとあらわれるところの不気味さ。
忠兵衛・梅川の追い詰められていく様が心に迫ります。

また宿衆たちが傀儡子、飴屋や古手買に化けてふたりを探して追うのも、人目の怖さとして映ります。

最後の雪山は布と風を使ってああも美しく演出できるのかと。
幾重にも重ねた白布が雪山の景となる。
風をはらんだ布に2人が倒れれば、バフッと音をさせながら本物の雪に倒れこむようです。
何度見ても演出の上手さに息をのみます。
本物以上に本物を思わせてくれるのが舞台というものなのでしょう。

梅川の姉女郎であるかもん太夫。
幸せなかもん太夫がもらわれていくのは大和、忠兵衛と梅川が死出の道を行くのも大和なんですよね。
この対照性もぐっときます。

かもん太夫が出て行く大門は舞台奥に真っ直ぐに、忠兵衛と梅川がひそかに出ていく西門は舞台を斜めに。
こういう見せ方も良いですよね。

冒頭の飛脚ダンスもとても好き。『エリザベート』のごもっとも隊(女官)くらい好き。
歌舞伎や文楽に描かれた世界ですよ、という面白い見せ方です。

『心中・恋の大和路』は、過去にえりたんとあゆっちのバージョンを見ました。

前回の2人のバージョンに比べて、今回のそら忠兵衛と夢白梅川は幼くいとけない雰囲気です。
おままごとの末の死とでもいいましょうか。
金に追い詰められたというよりは、世間知らず、知恵のなさの幼さが招いた死に見えました。

良くも悪くも純粋すぎて、愚かで莫迦でどうしようもないが幸せにすら感じる2人の道行きです。

忠兵衛と梅川の2人が若く幼いだけに、カチャ演じる丹波屋八右衛門がとても大人に見えましたね。
だから「親友……?」という感じもあるんですが、これはこれで面白いバランスでした。

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