●若き日のヘアフォール伯爵を演じたみやるりはすごくよかった。
サイラス(まんちゃん)が生きている時代、跡継ぎで重いものを背負った長男ではなくて気楽な身分の次男というのがよくわかる。
育ちの良さも感じるししっかりしてもいるんだけれど、どこか軽くて、調子よくて、少しせつないところもある青年の姿。
芝居の序盤、大学生くらいの年齢を感じさせる若々しさにリアリティがある。
そんな彼が兄を亡くして伯爵家を継ぎ立場に応じた人物になっていく、その流れがとても自然だった。
みやるりは男役たちと組んで仕事をしているところもすごくいいし、娘役と組んで恋を演じている姿も美しい。
気品と熱量があるいい男役さんだな。
キャサリンを想っての歌の途中、くるっと向きかえる動きが好きです。
●男役の常として、少年役でもないかぎり大人の役を演じなければいけないことが大半なのだけど、これまでのカチャは「背伸びしている」と映ることがほとんどだった。
そう感じない人もおられるだろうけれど、少なくとも私にはそうだった。
アゴがなくてとても小さな顔、身長はあるけれど華奢な体格、それに加えて高い声と、男役としての資質に恵まれていないから。
本人の意識や努力、そこから生まれる技術をもっても覆すのが困難なものってあるんだよなぁ……。
どんなに努力してもヒロインに見えない人がいるように、男役もまた、生まれもっての資質によるところが大きい。
前置きが長くなりましたが、それらのハンディを持ったうえでなお、今回カチャがちゃんとした男に見えたといいたかったんです。
「背伸びした」無理に作った男ではなく。
なんでだろうな。
明るく善良な役より、多少内にこもったSっ気のある役のほうがいいのかな。
でもこれまでもそういう役がなかったわけじゃないんだけど。
これが男役12年の成果?
●ちなつのラトヴィッジ部長に笑わされるとは思わなかった。
ヒゲの渋い役どころかと思いきや、配下が配下なので思うようにいかないという。
それでもかっこよさは崩さず、それがまたおかしいという。
特別変なことをしているわけでもないのになんであんなにおかしいんだろうなぁ。
芝居がうまいのは知ってたけど、こういうのまでできるとは思わなかった。
脇でもセンター寄りでも結果を出せるってすごいことだ。
ちなつはんは役の幅が広いわー。
しかもこんな役でも色っぽいというね。
●イワノフ役のゆりやんが黒かった。そして色っぽいところ担当。
ジェニファー役のうみちゃんに迫るところはほんっと気持ちいいくらいにガツッといってて、「やればできるじゃん! ていうかこういうのを見たかった!」と嬉しくなった。
思わずオペラでガン見しました。
最近はアホな子ばっかりやってた印象だけど、綺麗だしこういう役ハマるわー。
『アルジェの男』新公のジュリアンを思い出した。
悪い男もいいんだよね。
白いキレイな役どころももちろん似合うんだけど、今回のイワノフがめちゃくちゃよかったので、これまでなんて勿体ないことをしてたんだろうなぁと思わずにはいられませんでした。
白い役より黒い役のほうが存在感を出しやすいというのはあるかもしんないけど、それでも誰しもにできるものでもないだろうし。
「頭が割れてる。これまでずっと一緒だったんだ。助けてくれ」のくだりはまんまと騙されました。
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