『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』感想・4

花組

景子センセイの作品はたいてい悪役が小物だ。

「悪いといっても彼らには彼らなりの理由があるし、現代の視点では”悪”であっても時代背景その他を考えれば当然の考え方だったりする。
善悪は普遍的なものではなく相対的なもの。
彼らには彼らなりの人生があって、それがある視点から”悪”と呼ばれているにすぎない」

――そういう考え方を持っていて、それが舞台に反映されているのかなと。

その反映されたものの一つが、エンジェルブラックとエンジェルホワイト。
彼らは黒と白の衣装をまとっているけれども、片腕だけは互いの色となっている。
つまりエンジェルブラックの片腕は白くエンジェルホワイトの片腕は黒。
2人で1人、対であり、色の侵食に表れているように善と悪は混濁し、切り離すことはできないもの。

この綯い交ぜ感がチャチい(善悪のレベルが……)――のはさておき、それで困ったことになったのはアンドレア・シェニエさんの立ち位置だ。

シェニエさんは完全な白。
暴力でなく文学によって生き、人を導く、至高の存在である。

この綯い交ぜになった世界で。

黒の中に誰にも汚されぬ白があれば、それは鮮やかに浮き上がる。
しかし混濁したグレー(濃淡の度合いはさまざま)の中にあっては、純白もその濃淡のうちに沈む。

黒と白の対比にするか、グレーの度合いを楽しませるか。
どちらかのほうが面白かったんじゃないだろうか。

そういう意味でこの主人公は難しかったと思う。
とはいえ、立ち位置の難しさはさておき、私からみて、蘭寿さんのシェニエにはなんの不足も不満もないです。
ええ、微妙に評判の悪いカツラも全然OKです、はい。

1

花組

Posted by hanazononiyukigamau