『月雲の皇子』感想・6

月組

●想い人である「妹」衣通が穴穂の妻となった5年前から、詩文も情も忘れ、「大王(おおきみ)」と人に呼ばせるようになった木梨。

彼がヤマトに攻めいったのはなんのためだったのかがはっきりしない。
土蜘蛛が天下をしろしめすことが目的だったのか。
それなりに平和な生活を擲ったのは、衣通を奪われた敵愾心からか。

――このへんが、うまく考えがまとまらんのです。

詩文を愛した彼が愛する者を奪われてからは歌を詠むこともなくなり、武力を求め、死に邁進していく。
この変化は観ているときは感情部分でわかった気がしたんだけど、冷静になって考えるとよくわからんのだよな。

衣通が穴穂の妻になるまでは朝廷に攻め入ろうとはしていなかったんだよね。

土蜘蛛を束ねて、攻め入って――たぶん、朝廷を奪還しようとも衣通を我が物にしようともしていない。
ただ滅びるために、「飛ぶ」ために(本人の自覚の有無はともかく)、武器を鍛えて人を集めて、「大王」と呼ばせて幻の国を作り……。

死ぬために、王位を奪うという大義名分が必要だったのかな。
もしそうだとしたら、けっこう迷惑な男であるな。土蜘蛛の人たちの命運もかかっているわけだし。

●衣通のみゆがパロ(=はーちゃん)をかばって海で死ぬ流れは少々ご都合主義に思えた。
最終的に衣通も木梨も死ななきゃいけないという伝説の既定路線に沿ってるだけのような感じがした。

●からんちゃんは歌があってよかった。
ほんとに少年専科だなぁ。

アミルの作った衣装は綺麗でした。
しかし、あの貧しい状況でどうやって材料を調達したのだろう。戦いに邁進するようになる以前に用意してあったものなのかしら。

●ちゅーちゃんの芝居が好きだ。
女戦士=ガウリという役もかっこよかった。

●大前・小前兄弟(=有瀬くんとスミス)の芝居もよかった。
がっちり支えてくれる大人の職人系で頼もしい。こういう武人が実際にいただろうなと思わせる。

●「ぶつくしいー!」の応酬はおかしかった。
「美しい」なのに「ブス」が入ってそうで、なんかひどいことになっているという…(笑)。もちろん、言ってる人たちは本気で褒めてます。

笑わせるところもほっとするところもあって、楽しかったなぁ。

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月組

Posted by hanazononiyukigamau