『アリスの恋人』感想・4

今作品の作・演出は小柳センセイ。
大劇場でも小公演でも立て続けにヒットを出していて、私は公演が発表になった段階で「観たい」と思った。
今のところ彼女の作品で不愉快なものを観たおぼえがないし、むしろ好きなものばかりだから(昔のはよく知らない)。

みりおの人気なのか作品のよさによるものなのか青年館は人がいっぱいでした。
大劇場ほどではないにしろ、客席数1000を超える劇場に人がわんさかいるのは壮観だしテンションが上がる。
実際にはチケットは取りにくいし、出入り口が牛歩だし、物販ブースもお手洗いも込みすぎて大変なんだけど。

さて、小柳作品でいいなと思える点のひとつはキャラクターが宛書きされているところ。

みりおは大人になりかけの青年だし、あーちゃんは白く超越した人で、マギーさんはスゴツヨだ。
ちゃぴはきまじめそうな変キャラで、一色さんは渋く、ゆりあはツンな強い娘で、たまきちは包容力があり、まんちゃんは落ち着きのなさそうなところがハマる。

あーちゃんはバラ国の王妃っぽいし、マギーさんは『ホフマン物語』の悪魔を思い出すしでなんとなーく既視感はあるんだけど合ってることに違いはない。

そして登場人物の紹介が上手いところも好きだ。

赤の女王チーム、トランプチームといった具合にキャラをグループ分けして、それを歌い継ぎをさせながら「魅せる」形で観客に示す。
ぼーっと観ていても楽しいし、登場人物の紹介として理解を進めるのにも役立つ。

「めぐ会い」のときも思ったけれど、こういう紹介の仕方に無理がない。

そしてみんな突拍子もないことを言い出したりしはじめたりしないのがありがたい。

たとえば前振りなしで「お前の命をおくれ」と孫にむかって叫ぶ婆ちゃんとか、
「命を大事にしろ」とヒロインに説教する余命いくばくもないボディガードとか、
愛を連呼したあげくになんでかヒロインと死ぬために筏に乗る、国を捨てて平然としている将軍とかさ。
そういう困った思考回路の人がいないのがありがたい。

舞台はファンタジーだけど、出ているのは人間で(例外はいるが)、観ているのも人間だ。
おかしな人という設定でもないのに登場人物がおかしな言動をしていると感情移入できない。
物語にいらついてしまう。

そして物語の着地点がまともだ。
「夢は大切だ」という甘さを残しつつも、「辛くてもきちんと現実を生きなさいね」というまっとうな苦さがあるのが良心的だなと思う。
説教くさくなく、観客が素直に受け取れる形で差し出されているのがいい。

「夢」だけに生きることを選ぶ(たとえば『アルジェの男』のジュリアンのように)――もちろんそういうのも好きだ。
浮世を離れた夢は美しい。ロマンだ。
だけど物語にできるのはそればかりではない。

ファンタジーやおとぎ話やドレスやネコ耳で甘くやわらかくコーティングしつつも、きちんと現実を提示する。
逃げない物語だ。

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