『アルジェの男』新公感想・2

2021-01-31月組

トリプルヒロインの2人について。

●アナ・ベルのゆめちゃんは、これはアナ・ベルじゃないなとしか。
ごく普通の少女にみえた。俗人っぽかった。

信仰心の深さや、透明感がみえない。
ジュリアンの心を知ってなお彼を恨まず、周囲への気づかいを忘れずにいる清らかさが感じられなかった。

ジュリアンに裏切られて死を決意するところは、若さゆえの一過性の衝動にみえた。
特に「あの人にも言わないでね」とアンリに告げるくだりはぶっちゃけキレてたような感じだった。

アナ・ベルの死に悲壮感がなくて本公演の様に泣けなかった。
死にゆくときの歌も下手じゃないと思うのに、その芝居のせいで感動できない。
ずいぶん言ったが、本公演のみくアナ・ベルが偉大なのかもしれん。

あとメイクダウンしてたようにみえた。
すっぴんかわいいのにな。

●ちゅーのエリザベートはすごくよかった。

本公演のりっちーエリザベートより感情移入しやすかった。
エリザベートに若さゆえの過ちや頑なさは感じるけれど、それほどイヤな女にみえなかったのがよかったんだ。

「どういうことなのこれは」がギャグに聞こえなかったのにびっくりだよ。
本公演は「お前の性格が“どういうことなの”だよ! あんだけひどいこと言っておいて」とつっこみたかったからなぁ…。

「私の誇りはどうなるの」と歌うところも、恋をしていることに薄々気づいているけれどまだ認めたくなくて、自分が傷つきたくないから「誇り」を盾にしてるんだろうな。
きっと、愛されてない相手を好きになることで負う痛手から身を守ってるんだろうな、と思う。

エリザベートには心の優しさや愛がちゃんと備わっている。
ただ、若くて、自尊心を盾にして自分を鎧っているだけ。その中には柔らかく美しいものがある。

「許せないわ」も、りっちーのはジュリアンに対する敵意だったけど、ちゅーのは心の動揺だった。自分の心に向けられていた。
恋をしていることが伝わってくる。
感情の揺れがいとおしい。

正直なところ、本公演のエリザベートよりいいと思う。

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