いじめ裁判本

音楽学校,雑誌・書籍

例の裁判についての本『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判』を読みましたよ。

出版社がこれまた例の鹿砦社というのがなんとも言えない気持ちにさせられるところですが、阪急に真っ向から刃向かうような本を出そうとするところなんてここくらいしかないのかな、と思ったりもします。

さて中身について。

書き方が少々(かなり?)ウェットで、かつ週刊誌かいなと思うようなところはありますが、裁判に至るまでの流れや裁判での証人尋問での(一部の)答えなどが出ていてわかりやすいです。
96期生の名前は本名のイニシャル記載。(A本、Y田など)

写真もいろいろと。
全部目線が入ってますが、Sさん合格時の新聞記事やWさんのブログから出たもの、それに準ミスの審査時の写真まで。
彼女だって現役ジェンヌには違いないので水着写真ってとても微妙な気持ちになります。

あとは今回の事件に絡む予科規則も本文中に出てきます。
不謹慎な言い方かもしれないけれどなかなか興味深い。

音校入学から学校側との第1回面談までが約4ヶ月。
そして自宅待機通告と強制送還までを入れても約7ヶ月。

それだけの時間がSさんが音校生だったといってしかるべき日々だったと思うけれど、本を読むかぎりなんと壮絶で苛酷なときであったことか。

学年全体が「予科生」という極限状態であったとはいえ、彼女の身に降りかかったものはあまりにも苛烈だ。

Sさん自身にもいくつかの落ち度はあった。判断ミスもした。
だが事件当時は16~7歳の少女にすぎない。
彼女の犯したミスは「そのくらいあるだろう」と見逃し得る程度のものだ(少なくとも私には)。

同期生の携帯メールを見たことは咎めたくなるけれども、仲間のいないあれほどまでに追いつめられた状況であるならば、それも強く責める気にはなれない。

そして彼女に落ち度があったとはいえ、それは彼女が受けた仕打ちに釣り合うものだろうか。
本に書かれたことが事実であれば、彼女のしたことと彼女が受けたむごい扱いは、音校という特別な場であるにしてもとても釣りあうレベルにはないと思う。

それにしても腹が立つのは音校側の対処のひどさだ。

Sさんの話を一切聞こうとしなかったところからはじまり、その後のありえない対応の数々が明るみに出る。

いじめはどこにでもある。
仮に音校に教員資格のある人がいたとして、それが防げるなどとは1ミリたりとも思えない。
だが、いじめを認めてよいことにはならない。

生徒間の自治でどうにもならないならば、それを制御するシステムが機能していなければならないのに、それがまったく正常に働いていなかった。

さらに腹が立つのは音校が96期生すらかばおうとしなかったことだ。

96期生がSさんにしたことはとうてい庇いだてするようなことではないし、ファンとしてははらわたが煮えくりかえる思いだ。
今後、96期生にどんな悲しいことがあろうと基本的には「ああそう」くらいの冷めた気持ちでしか見れないだろうとも思う。はっきりいえばアンチなのだろう。

そうであるにしても、Sさんを認める気がなく自己の主張を通そうとするなら、せめて96期生を庇う姿勢くらいは見せてほしかった。
彼女らを裁判の証人として出さず、すべて音校職員で泥をかぶるくらいの気持ちでいてほしかった。

それをわざわざ公衆の面前に出した。
彼女らを使って自らの正当性を主張しようとした。
彼女らが受ける非難がどれほどのものになるかわからないはずもなかろうに。

音校のとった行動がすべて保身にしかみえなくて、96期生が哀れに思えるほどだ。

さて、唐突に思い出がたりをいくつか。

私(と姉)は96期が予科時代のすみれ売りに行ってるのですよね…。
とうぜん内部でなにがあったのかは知らなくて、のほほんと募金したり写真撮ったりしてましたわ。
あの中にSさんもいたのかと思うと腹の底が重くなる。

すみれの造花も写真もまだ手元にある。
写真はどうも見返す気になれない。
全員分撮ったわけじゃないけれど、見ると腹立たしくなるだろうし、Sさんが写っていたらそれはそれで辛いし。

そして96期が初舞台の月スカピン。
公演前だったかにプチミュで舞台稽古のようすの映像などを見ていたのだが、お客さんの中にロケットのシーンになるとすっといなくなるお姉さんがいた。
繰り返し流れるなかで、ロケットのときだけ静かにいなくなって、それが終わると戻ってくるのね。

よほど見たくなかったんだろうなぁ。
その静かな抗議に胸をうたれた。

そして開演前のロビー。
当日口上を述べる子の母親と思しき人が知人にあいさつをしていた。
例年ならば微笑ましい光景なのだろうが、むしょうに腹が立った。

誰の母親かは知らないけれど、卵のひとつも飛んでくることを夢想してしまった。

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