『夢千鳥』を見たんだ・1

宙組公演感想,宙組

夢千鳥

宙組バウホール公演『夢千鳥』をディレイ配信で見ました。

宝塚歌劇の、生中継ではないディレイ配信は『夢千鳥』が初です。
主演の番手(そらちゃんは宙組4番手格)的にもライブ配信は予定していなかった作品ですが、ディレイ配信という形で公演を見られてほんとうによかったです。

公演が佳作かどうかなんて観る側の好みにも左右されるものなのは重々承知の上で、これはすごい作品だったと言わずにいられません。

もうね、栗田優香センセイありがと―――――――――――――!!!ですわ。

宝塚に、栗田センセイという新しい演出家が誕生したことが嬉しくて仕方ない。
めでたい、マジでめでたい。
ウエクミに、『龍の宮物語』の指田珠子センセイに、『夢千鳥』の栗田優香センセイ。
ああ。宝塚歌劇の未来は明るい。

ていうかこれがデビュー作ってどうなってんの。
噂ではもともと大学時代からの舞台制作経験者という話ですが、それがどうでもほんとすごい。
早く2作目を観たい。

『夢千鳥』は、そらちゃん演じる竹久夢二と、かれにまつわる3人の女(他万喜、彦乃、お葉)の関係を軸に「愛とはなにか」を描く作品です。

この愛の描き方が、えぐい。
夢二が他万喜、彦乃、お葉に向ける感情が愛かどうかはあやしい。
というか、栗田センセイは愛ではないものとして描いてますよね。
甘えだったり、執着だったり、相互依存だったり。

「男が美しい花を愛していると言って、でも花が枯れそうになっても日にもあてない男が『愛している』といってもどれだけ信じられるだろう」

というようなことを、彦乃の父が夢二に言うシーンがあるんですよね。
夢二は相手を縛ろうと、支配しようとする。

それを踏まえて、白澤優二郎(そらの2役)は赤羽礼奈(みねりの2役)を解放する、という最後の流れもお見事でした。
だから大正パートだけじゃなく昭和パートも必要だったのね。

夢二たち大正時代のパートと、優二郎たち昭和時代のパートなどの時代的な行き来、そして場面転換の上手さも栗田センセイの特長です。

大正も昭和も演者は衣装が同じなのに、舞台の切り替えとジェンヌさんの演技で混乱させないのはすごかったです。
りんきら、あーちゃんとのバーの場面とかね。

同時代でも暗転せずに場面を切り替える手腕は鳥肌が立つほどでした。

特に、夢二と他万喜の場面から、他万喜と彦乃の両親の場面への移り変わりね。
夢二と争ってうち伏せられた他万喜が、そのまま彦乃の両親に頭を下げている流れになるところです。
こういうのはマンガや映画でたびたび使われる手法ではあるけれど、過去の宝塚の舞台ではあまり見なかったような。
被虐側にいた他万喜が一転して加虐側に回る、とても効果的な場面転換でした。

『夢千鳥』はバウホールで数日間しか上演されなかったんですよね。もともと長くはなかった公演日数が、コロナ禍で途中で中止になってしまって。
このクオリティの作品をそのままにしておくのは惜しい。
再演してほしいと思える作品です。

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