『夢千鳥』を見たんだ・3

・ひばりちゃん演じる彦乃は裕福な生まれのお嬢様で、女学生で、夢二に愛されていて、若くして亡くなってしまう……。

とてもヒロイン的な素材で、どこまでも純粋に愛らしく描ける役なのに、『夢千鳥』ではなにげにエグいですね。
さすが栗田センセイです。
造形に毒があり、ただの都合のいいヒロインではない。

生まれの良さゆえのナチュラルな上から目線とか、東郷青児への「おたがいの為なんだから、当然協力してくれるわよね?」という、他人は自分に尽くして当然と思ってる感じとか。
若さゆえ、生まれゆえ、美貌ゆえなど理由はさまざまにありましょうが、彦乃の傲慢さがすごいんです。
ただの純情できれいなお嬢さんとしては描かないのね。

彦乃を演じるひばりちゃんの演技を見るのは、記憶にあるかぎりでは文化祭と『SAPA』に続く3回目です。
今回はアニメ声っぽい感じだったけど、過去公演ではそう感じたことがない。
アニメ声の幼さが、彦乃の純真で傲慢で残酷なところと響きあう。
また、夢二の中で理想化されている幻想のような雰囲気すらある。

ひばりちゃんは美人で歌もうまい娘役さんなので、これからも期待しています。
見た目にヒロイン感があって歌がうまいって強い。

・予想外にとてもよかったのがひろこちゃんのお葉。

美人ダンサー娘役として宙組ファンには知られていた存在だと思うんだけど、演技の印象ってなかったんだよね。
上手い下手とかじゃなくて、「ない」のね。
だから今回とてもびっくりした。
演技上手いじゃないの!!って。なぜ今まで出てこなかった……!

ダンサーだからポーズの決め方も完璧で、彦乃を喪ったあとの夢二が「簡単なポーズも続けられない」モデルたちのあとに重用したのも納得。
美しくて色気もあって、みなが恋人や愛人にしたがり、さらには「私をお嫁にしたい男なんて掃いて捨てるほどいるんだから」というセリフにも説得力がありまくりですよ。
だって、きれいなんだもの!!!

お葉は学がなく、それゆえに男たちに軽んじられたり都合よく扱われたりもする。
でも芯のところでしっかりしていて幸せを掴める強さのある女の子です。
ずっと籠の鳥のままではいない。
ほんと、夢二なんかほっといて幸せになってほしい……というか、なってくれてよかった。

・怪演であり快演であった峰里ちゃんの他万喜。
凄かった。
もう凄まじかった……!

みねりちゃんの美しさは、モデルとしても女優としても納得のもの。
大正のフィンガーウェーブっぽい日本髪も似合いまくり。
情念をまとった雰囲気、据わった目、悪女ぶり。
若手娘役にはそうそうできない役どころを、研10の経験値でもって演じきったのはさすがでした。

夢二との喧嘩のシーンの凄味ったらなかった。
この脚本を書いた栗田センセイもすごいが、それをやりきった人もすごい。

元は他万喜が夢二に絵を指導したんですよね。
年上で、男にモテて、絵の師匠でもあって……という「勝てない」ところが夢二の気に障るのよね。
青い鳥を籠の中に閉じ込めておきたい夢二にとっては、他万喜の優越性ゆえにより屈折した関係になってしまう。

それでいて互いに執着して、依存して、DVがあっては離婚して、でも子どももできて……。

夢二とたまきのDVからタンゴ、キス、首を絞める。
「もっと狂って私に妬いて」と歌う他万喜。
ナイフをとり他万喜に襲い掛かり、血を流した他万喜の姿に筆が進む夢二。

なんなのよお前ら、と思うけど、なんとなくわかる気もする。
そして「刺さる」人にはめっちゃ「刺さる」関係だ。
えぐい性癖が目覚めそうだよ……!

そらちゃんとみねりちゃんのガチンコ勝負っぷりに目が離せませんでした。
どちらも命をかけてぶつかり合ってる気がする。夢二と他万喜も、そらとみねりも。
実力派同士だから遠慮なしにやれるよね。これも相手への信頼感ゆえだと思う。

※ミスってたところ修正しました。ご指摘ありがとうございました。

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