先日、人生何度目かの歌舞伎に行ってきました。
大阪松竹座で行われた2月11日(日)午後4時からの『立春歌舞伎特別公演』です。
地方民だとなかなか劇場まで行けなくて、ときおり映画館でシネマ歌舞伎を見るくらいでした。
劇場で、生でみるというのはわくわくしますね。
建物自体が素敵だし、直に聞く声や楽器・鳴り物の音も格別です。
1階席と3階席と
これまで3階とかで見てた気がするんですけど(安いから)、今回は1階席、それも前方。
見える世界も感じる世界も違いますね。
どちらがいいとは一概には言えません。
当たり前ですがよく見えるのは1階前方席。
オペラグラスいらないのありがたい。オペラグラス越しじゃないから細部まで見える。表情もよくわかる。
花道も奥まで見える。
ライトが当たってなくても「あ。きた」とこれからの流れにわくわくできる。
1階席だと「成駒屋!」「音羽屋!」などの屋号の掛け声もほどよく聞こえる。
以前、3階席で近く聞いたときは「うるさっっ」と思いましたからなぁ……。(歌舞伎好きな方には怒られそうだけれども)
一方、2,3階席だと足元の動きもきれいにみえるのがいいところ。
前方すぎると見上げる形になって、足元は見えなかったりしますよね。
それと全体が立体的に見えるのは上階の席。
一目で全体を収められ、俯瞰的に全体像が見えるのは上階ならではの良さです。
ただし花道が奥まで見えないのは仕方ないところ。
新版色讀販 ちょいのせ
油屋番頭善六 中村鴈治郎
丁稚久松 中村壱太郎
お染 尾上右近
おみね 上村吉弥
松屋源右衛門 中村亀鶴
山家屋清兵衛 片岡愛之助
中村鴈治郎さんの笑わせがすごい。
愛嬌のある見た目ですね。
そういや、たぶん初めて生で歌舞伎を観たのがこの方の襲名披露のときだったわ。
片岡愛之助さんが色っぽくてすごい。
存在感もあるし。
お名前と評判はなんとなく存じ上げてましたが、「ああこの人が、なるほど」となりました。
連獅子
親獅子 中村扇雀
子獅子 中村虎之介
ときどき宝塚の和物でも見る連獅子。
白いかしらが親、赤いかしらが子ども。
体幹がすごかったです。
親子で演じてるんですね。
しかも元宝塚の娘役・扇千景さんの息子さんとお孫さんに当たるのか。
そして扇雀さんは鴈治郎さんの弟さん、と。
歌舞伎の血縁関係はよくわからないがすごい。
曾根崎心中
天満屋お初 中村壱太郎
平野屋徳兵衛 尾上右近
天満屋惣兵衛 中村寿治郎
油屋九平次 中村亀鶴
平野屋久右衛門 中村鴈治郎
1幕とは男性役と女性役が逆になるんですね。
歌舞伎はこの人は女形、この人は男性役しか演じないとか明確に決まってないのか。
歌舞伎の世界、知らないことが多すぎる。
「曾根崎心中」は1時間35分とけっこう長いので寝るかな?と思ったのですが、全然寝ない。面白い。
さすが、長年にわたって演じ継がれてきただけあるわ。
ロングセラー、ベストセラーというのは素人にもわかりやすい質の担保の指標です。
なんとなくでも知ってたり見たことある作品だとすごく楽しめる。
曽根崎心中は「あー!これがあの有名な文句の!!」って興奮しました。
何かを楽しむには知識や教養はあったほうがいい。無知より5倍くらいは楽しめると思う。
お初と徳兵衛の物語は、たしか景子センセイの作品『近松・恋の道行』で、若き日のかれーちゃんが人形振りをやってましたね。
(お初は1期下の乙羽映見さん)
大坂を舞台にした人情物なので、主人公の徳兵衛はふわふわとしたお坊ちゃん。
生まれは農家で苦労もしてるけれど基本的には人が良い。
つっころばしって言うんでしたっけ。
徳兵衛は友人にして恋仇の九平治に騙されて、人前で面罵され顔に傷もつけられる。
大坂町人たちに囲まれて見下される図は冷え冷えとして、あんなに大人数で囲まれてなじられては立つ瀬がなかろう。
とにかく大坂町人の視線がすごくて、徳兵衛を心理的にも社会的にも追い込んでいくのがまざまざと分かる。
特に「騙り屋」の声がよかった。
お初はかっこいい。
心中を決めるのはお初なんですね。
徳兵衛はもちろん死ぬ気だったろうけれど、お初も徳兵衛のためにとの一途な心で押していく。
もちろん、2人とも死ななければ、誤解も解けて明るい未来もあったのだろうけれど。
鴈治郎さん演じる久右衛門の泣かせに、宝塚の汝鳥伶さんを思いました。
金を用意して徳兵衛と女郎・お初を夫婦にしようとしたところは『心中・恋の大和路』のよう。
「此の世の名残り夜も名残り、死にゆく身をたとうれば、あだしが原の道の霜、一足ずつに消えてゆく、夢の夢こそあわれなり」の義太夫節を生で聴けて感動しました。
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