『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』を見たんだ・1

星組公演感想,星組

星組シアター・ドラマシティ公演『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』をライブ配信で見ました。
3月26日(日)16:30の回です。
このたび上演されたのは宝塚で何度も上演されている柴田作品ではなく、フレンチ・ロック・ミュージカルです。
こっちゃん率いる星組が日本初上演のはず。
潤色・演出は若い方の谷センセイ。

主演が現宝塚でトップクラスに歌の上手いこっちゃん。
ダブルヒロインが情念と歌唱力に秀でのベテラン娘役のくらっちと、歌唱力と可愛さと強さを見せる新進娘役のちづる。
狂言回しのような2番手が、ダンス力と華に歌唱力も増したありちゃんという万全の布陣。

加えて、悪役ポジションにこっちゃんと同期で3拍子そろった実力のひーろーに、抜群の美声と娘役芸のほのか。
さらに、元星組組長で生徒の信任厚い専科のじゅんこさん、若手娘役ながら歌唱力に演技に優れ小悪魔性まであるるりはな。
そしてダンサーのきさちん、さりおも存分に演じ踊る。
――という強力すぎるメンバーがメインに立ち、失敗する方が難しいでしょう。

劇場ならば、歌の音圧も、セットの迫力も、あらゆる空気感もこんなものじゃないだろう。
配信ゆえの物足りなさを感じ、現地で観たああああい!!と叫びたくなる演目でした。
いや、チケットないからさ、配信があるだけでもありがたいんだけどさ。

主演のこっちゃんが演じるジュリアン・ソレルは、今まで宝塚で観てきた『赤と黒』のジュリアンに比べるとずいぶんと卑屈で歪みがストレートに見える。
あくまで「宝塚の主演男役」が演じることを想定して作られた役との違いでしょうか。
しかしこの暗さやゆがみがこっちゃんの新たな魅力を引き出しました。
少年みのある明るく素直な優しい役も素敵ですが、ああこんな演技もできるんだ、こんな役にもなれるんだと男役トップスター・礼真琴の奥行きを感じさせてくれます。

もちろん圧巻なのは歌。
歌えないジャンルはないのではないかと思えるほどの歌唱力に、芝居での凄味を加味して画面越しにも呑み込まれました。
特に聖書をラテン語で暗誦する場面。
年齢・出自その他ゆえに軽んじられている彼が、知識と矜持でもって「格上」の相手を屈服させる。
ラテン語と歌に、ジュリアン・ソレルの鬱屈と征服欲が奔流のように流れ出た瞬間でした。

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