『少年』

雑誌・書籍

吉屋信子の『少年』を読んでいたら宝塚歌劇のことが出てきました。
主人公の桂子は女学生で、舞台は戦後からそう遠くないころ。引揚、闇米、浮浪児という言葉も出てきます。そんな時代の話です。

桂子が別れて暮らしている母と修学旅行先の東京で会い、いっしょに宝塚歌劇を観る場面があります。
(なお、一郎さんというのは母親の再婚先にいる継子です)

母親というものは、彼女が息子に望むような夢を、娘にはかけないものだと知った。だからおかあさんは、まあ宝塚でも見せて帰れば、わたしが満足すると思っているのだ。そして一郎さんの昆虫学に興味のあることをじまんするのだーーわたしはこんなことを考えながら少女歌劇を見ていたせいか、その日はちょうど最後のいわゆるらくの日になるので、観衆は熱狂し、舞台と交歓して、五色のテープを投げあい、場内の中央につるしたくすだまがわれて風船がとび、コンフェッティが五彩の霧のように満場に散ったり、大熱狂だったが、わたしは酔えなかった。

親や世間が男の子と女の子にかける期待の差。今でもあるよねぇ……と考えさせられます。

それはそうと、千秋楽のようす。
昔はテープや紙吹雪が舞っていたのですね。
思い悩む桂子にはそれどころじゃなかったとはいえ、いかに美しく楽しかったことでしょう。

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